訴訟大国の米国らしい訴訟が起きている。

 日頃、食べている魚に含まれる水銀の含有量を、小売りレベルで表示すべきではないのかという法廷闘争である。

スーパーで売られる魚に水銀量が表示される日

 魚介類でも特に大型魚であるマグロなどは過去、水銀問題が何度となく浮上した。ただ鮮魚店やスーパーの店先で販売される魚に水銀含有量を表示する義務は、現在のところ日米両国でない。

 今回の訴訟で被告側が負けると、米国の小売店では特定の魚類に水銀値が示されるようになるかもしれない。それは数年後、日本国内の小売店でも同じ義務が生じる可能性を意味している。

 そもそもどういった経緯で訴訟になったのか。そして魚介類に蓄積された水銀は本当に人体に有害なのだろうか。

 訴えを起こしたのは首都ワシントンD.C.に本部がある公益科学センター(CSPI)と東部バーモント州にある水銀政策プロジェクト(MPP)という消費者団体である。被告は米政府機関である食品医薬品局(FDA)だ。日本では厚生労働省医薬食品局にあたる。

 10年以上前からFDAは環境保護庁(EPA)との共同研究で、水銀の過剰摂取は妊婦や妊娠の予定がある女性、授乳期の母親や幼児の健康に悪影響をおよぼす危険性があると警告してきた。

 しかし、消費者2団体は警告だけでは不十分であると主張し続けている。2011年にはFDAに対し、小売店で販売される魚介類に含まれる水銀量の表示を義務化すべきだとした嘆願書を提出した。米国の消費者団体らしい動きである。

 政府機関がこうした嘆願書を受理した場合、180日以内に何らかの返答をする必要がある。だがFDAは全く行動を起こさず、事実上の無視を決め込んだ。

 消費者運動に尽力する弁護士サマー・クパーオドゥ氏は政府への不満を述べる。