ルネサス エレクトロニクスは、2014年3月期の連結営業損益が547億円の黒字になる見通しであると発表した。3期ぶりの黒字を確保したわけだが、これは早期退職等のコスト削減によるところが大きく、実際のビジネスで利益を出せているかは、はなはだ怪しい。
ルネサスは過去に、2011年3月に約1500人、2012年10月に約7500人、2013年9月に2300人の早期退職者を出しており、これに加えて2015年度末までに5400人を追加削減すると発表している。ピーク時に約4万8000人いた社員は、現在2万8000人となり、これがさらに減って2万2600人になる計算である。ルネサスの苦難の道はまだまだ続く。
しかし、明るい兆しも見え始めた。世界シェア1位の車載半導体マイコンで、最小加工寸法40ナノメートル(nm)の製品を年内に量産すると発表した(日経新聞2014年2月18日)。現在量産している製品は90nmで、そこから一気に微細化を進める。さらに、4年後を目途に28nm製品の試作生産を進める計画であるという。
ルネサスが最先端マイコンを開発する狙いは、自動運転車などのスマートカーにあると思われる。現在クルマには、エンジン制御、カーナビ、自動ドア、サスペンション制御、アンチロックブレーキシステムなどに、50~100個ものマイコンが使われている。
クルマの自動運転化が進めば、上記に付加して、より高性能なプロセッサが多数搭載されるようになる。2012年に破綻寸前となり、最終損益では8期連続赤字が続くルネサスにとって、この自動運転化の波は再起のための絶好のチャンスであると言えよう。
しかし、それを阻む足かせもある。それは、政府系ファンドの産業革新機構とともにルネサスの株主となったトヨタ自動車や日産自動車などのクルマメーカーである。本稿では、トヨタや日産がルネサスの足かせになる理由について論じ、その解決策について考えたい。
完全自動運転までの5段階
そもそも、自動運転車とはどういうものか? 米国運輸省道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration、NHTSA)によれば、自動運転を次の5段階に分類している(出所:「視点・論点『自動車の自動運転』」、清水和夫)。
・レベル0 自動化なし
・レベル1 加速とブレーキの一部が支援される
・レベル2 加速とブレーキに加えて操舵が支援される
・レベル3 限定的な半自動運転
・レベル4 完全自動運転