先般の東京都知事選挙は投票率46.14%にとどまり、前回の投票率62.60%を大きく下回る結果となった。

 昨年7月の参院選でネット選挙解禁が実現されて以降、候補者による選挙期間中のネット活用や有権者がネットでそれらの情報を目にする頻度が上がりつつあることは確かであろう。

 東京都知事選における家入一真氏のように、極端にネット中心の選挙戦を展開する候補者も現れ、「選挙×ネット」の潜在性を掘り起こし始めているところだ。

都知事選後の「ネット悲観論」は的外れ?

 それに対する今回の大幅な投票率の低下、組織票で圧倒した舛添要一氏の当選。予定調和のように「ネットの影響力悲観論」が噴出している。

 初のネット選挙解禁となった昨夏の参院選前に、僕が政治学者の名取良太氏と行った対談の中で、次のような見解を示している。

小川 マスメディア主体の選挙広報とネット活用が対比的に語られることがよくあるんですが、そもそもマスメディアによる選挙報道そのものが、投票行動を決定的にガラッと変えるようなことをやっていたかというと、そうでもないと思うんです。

名取 そうですね。最近あらためて議論が起きていますが、少し前までは、マスメディアからの情報が、投票先を変えさせるほど強い効果(改変効果)を持つとは考えられていませんでした。

 どちらかといえば、もともと有している意思を、より強いものにさせるような補強効果や、アジェンダセッティング機能を果たすものと分析されてきました。

小川 ということは、マスメディアだからネットだからと言ってみても、そもそも有権者というのはメディアの影響だけですべてを決めているわけではない、と。そういう前提に立てば、ネットなのかマスなのか、というだけの話じゃないわけですね。