2月9日に投開票が行われる東京都知事選において、「脱原発」が1つの争点となっています。

 3.11の映像は今も生々しくすべての日本人の心の奥に焼き付けられています。原発に対してはほとんどの方が恐怖の感情を持っていることでしょう。ですから、脱原発が、国政ではない都知事選の争点になることを否定するつもりはありません。

 でも、ここで私が指摘しておきたいのは、1つのリスクだけに目がいくあまり、他のリスクを無視してしまう危険性です。

 2001年9月11日のアメリカでの同時多発テロの後に、多くの人たちが身を守るために、飛行機ではなく車で移動するようになりました。アメリカ人の飛行機から車への移行はその後約1年続きました。

 飛行機は車よりもはるかに安全な乗り物です。予想通り、アメリカでの自動車事故死は急増し、1年後にはまたみんな飛行機に乗るようになりました。アメリカ人が飛行機から車に切り替えたことで増加した死亡者数は約1600人と推定されており、実にテロの犠牲者数の半数を超えてしまいました。

 このように、人間は恐怖にだまされるものなのです。

 もちろん、脱原発を唱えている政治家の方々は、自分の気持ちに本当に正直なのだろうと思います。