そもそも介護現場では、まずはなによりも人手が絶対的に不足している現実がある。確かに資格をあまりに簡単に取得できれば、介護職員の知識不足や職業意識の低下につながることもあるだろう。
だが、資格取得が難しくなることにより、あるいはそれがあくまでイメージに過ぎないものであったとしても、介護分野の門を叩く人の数が減ってしまっては困るのではないか。とりわけ外国人にしてみると、日本語による試験が課されることへの拒否感は日本人以上だろう。
介護現場の現実と資格制度は、どのように噛み合っているのだろうか。そして介護職に関心がある人や介護職を目指す人に新制度はどの程度きちんと理解されているのだろうか。
実習が任意になることも懸念材料
新制度への移行について、別の懸念もあるようだ。
井上さんが指摘するのは、介護実習が任意になったこと。ヘルパー2級の取得に当たっては実習が必須だったが、新制度により養成講座側が独自に実習を行うかどうかを決めてよくなったのだ。
つまり、外国人であっても、日本人であっても、事前の介護経験を持たないままに、現場に出る可能性が出てきたのだ。
だが、介護という人と接する上、時に命にかかわる仕事において「実習をしなくてもよい」というのは、どんな意味を持つのだろうか。例えば、上位の資格とはいえ、看護師の養成機関ではかなりの時間が実習に費やされる。
井上さんは「ヘルパー2級では実習が介護施設の負担になっていた現実があり、場合によってきちんとした実習がなされないケースもあったと聞いている。だが、かといって実習は非常に大切なものだ。実習なしに、いきなり現場に出ることはできない」と語る。
この実習の任意化は、外国人・日本人ともに介護職を目指す人にどんな影響を与えるのか。今後も注視する必要がありそうだ。