このフィリピン人女性は積極的に授業に参加するなど学習熱心だった上、明るい性格で日本人のクラスメイトと非常に仲良くなった。

 そして無事にヘルパー2級の資格を取得し、介護現場で働きだした。同時に、ほかのフィリピン人女性が、どんどんアイ・ヘルパー・ジャパンにやって来てヘルパー2級の講座を受講するようになったという。

 実は、最初に資格を取ったフィリピン人女性は、在日フィリピン人支援団体「KAFIN(カフィン)」のメンバーで、この会の中でアイ・ヘルパー・ジャパンの情報が広がったのだ。

 KAFINではシングルマザーやDV被害者など困難な状況に陥った女性たちの支援活動に力を入れていたため、仕事に直結する介護の資格に関心が高かったのだ。

 こうして口コミでアイ・ヘルパー・ジャパンの講座情報が伝わり、さまざまな外国人がヘルパー2級講座を受講するようになっている。中でもKAFINの支援対象であったようなシングルマザーのフィリピン人女性が受講者には多い。

増えるフィリピン人女性と日本人男性の結婚、そして離婚も

 では、なぜ日本にシングルマザーのフィリピン人女性がいるのか。

 日本の在留外国人数は2013年6月末時点で、計204万9123人。国籍別では中国が 64万7230人で首位。フィリピンは20万6769人で3位につけ、2位の韓国・朝鮮(52万6575人)に続いた。4位はブラジル(18万5644人)だ。

 さらにフィリピン人に特徴的なことは、女性の占める割合の多さだ。日本に在留するフィリピン人のうち女性は15万9501人と、男性4万7268人の約3倍となっている。

 こうした中、日本人男性とフィリピン人女性が結婚するケースが増加。厚生労働省の「人口動態統計」(このうち「夫妻の国籍別にみた婚姻件数の年次推移」)を見ると、夫が日本人、妻が外国人というカップルの婚姻件数は2004年時点で計3万907件で、このうち妻がフィリピン人の婚姻件数は8397件となっている。

 妻が日本人で、夫が外国人のカップルの婚姻件数は8604件で、うち夫がフィリピン人の件数は120件。夫が日本人で妻がフィリピン人というカップルの婚姻件数はそれまでの数年間も毎年7000件台で推移している。日本人男性とフィリピン人女性の夫婦が増えてきたのだ。

 このように、フィリピン人女性たちは出稼ぎのために日本に一時的に滞在していた存在から、結婚により日本で長期的に社会生活を送る「生活者」となっていった。

外国人シングルマザーの自立を促す介護職

 ただし、日本人男性とフィリピン人女性の夫婦が増加した分、離婚にいたるケースもある。日比カップルにかかわらず国際結婚はそう簡単なものではない。言葉や文化の違いもあり、妻と夫の考えがかみ合わないこともあるだろう。

 しかし、日本人と結婚し、子どもをもうけ、後に離婚したフィリピン人女性たちは、シングルマザーになったからといって泣いている場合ではない。食べていくため、子どもを育てるために、まずは働かなければならない。