哨戒艦沈没に安保理議長声明、北朝鮮名指しされず「外交の勝利」

1発の魚雷で真っ二つにされた韓国の哨戒艦「天安」〔AFPBB News〕

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 その結果、潜水艦が水上艦船攻撃(敵潜水艦攻撃を含む)に使用する長魚雷(Heavy Weight Torpedo)を、対潜部隊(水上艦艇、航空機)が潜水艦攻撃に使用する短魚雷(Light Weight Torpedo)をそれぞれ装備運用する状況を作り出したわけです。

 つまり、“潜水艦対水上部隊(対潜航空機を含む)”という図式の海上作戦である対潜戦ASW(Anti-Submarine Warfare)時代の到来!です。潜水艦側からしますと対水上艦戦ASUW(Anti-Surfaceship Warfare)となります。

 特に、第2次大戦以降の潜水艦の戦略・戦術両面での活動範囲の拡大は、ASW能力の急速な発展を促し、魚雷の世界でも自動誘導方式を採用したホーミング魚雷を出現させるなど、魚雷性能の飛躍的向上を見ました。

 そこでは、物理、化学、電気、電子、通信、材料等々、多分野にわたる技術力の結集が必要となり、現在の魚雷は、前述の魚雷の定義の域を超えるアセットとなった感があります。

 他方、魚雷能力の向上は、当然ながらそれへの対抗策である魚雷防禦対策TCM(Torpedo Counter Measure)能力の向上を誘引し、両者の相克は魚雷という水中武器が存在する限り絶え間なく継続されていくこととなります。

 このため、魚雷とTCMに関する技術は本来門外不出の性格を有するものであり、各国海軍とも独自の技術開発を進めてきております。本記事では、主として我が国の魚雷分野の変遷を辿り、魚雷という古くて新しい水中武器の現代戦における存在意義を考察してみます。

 海軍史上初めて魚雷の元祖と言える物を実戦で使用したのは、16世紀後半のオランダ海軍でした。その形態は、火薬を密閉した容器を積んだ小型ボートを敵艦に夜間横づけし、時計仕かけで爆発させ被害を与えたと言われています。

 その後、米国の独立戦争時(18世紀後半)などで、機雷をブイに吊るし手漕ぎボートで敵艦直下に機雷を設置し、たびたび大損害を与えた事例が残されています。