本記事はLongine(ロンジン)発行の2013年7月12日付アナリストレポートを転載したものです。
執筆 泉田 良輔
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今回はポートフォリオの内容が、時価総額の比較的小さい銘柄で構成されている小型株ファンドなどと呼ばれる投資信託について公開されている運用報告書等に基づいて分析します。結論をいいますと、小型株ファンドの運用報告書は投資アイデアの宝箱のようなものです。ひとつずつ理由について考えていきます。

はじめに、小型株のベンチマークについて考えてみましょう。小型株のベンチマークは時価総額が小さいもので多くの銘柄数で構成されます。したがって、大型株式のベンチマークとは異なり、ポートフォリオの構成銘柄の上位10における各銘柄の構成比率は小さくなります。これはどのような意味を持つかというと、運用者にとって上位の銘柄も将来好調なパフォーマンスが期待できないと思えば、一切ポートフォリオに入れる必要がないということを意味します。

一方、大型株ではそのような状況にはないことが多いです。たとえば、大型株のベンチマークにおいて、A銀行がベンチマークの5%を占めるとします。運用者はA銀行は将来ベンチマークに対して株価のパフォーマンスは下回ると考えたとします。つまり、A銀行株には自信を持てないということです。結果どのような投資行動となるかというと、A銀行株を運用しているポートフォリオの時価総額のうち、たとえば3%相当を購入します。

「A銀行株が将来ベンチマークに対して株価のパフォーマンスが下回ると考えるのに、なぜ購入するのか」と疑問に思われる方も多いかと思います。これは、運用でのリスク管理上良くみられる投資行動です。運用者からすると、A銀行に関しては、ベンチマークの5%に対して、運用している総額のうち3%しか購入していないわけですから、「アンダーウェート」していることになります。つまり、A銀行株のベンチマークに対してのリスクを減らしながらも、A銀行株がベンチマーク以上には上がるとは考えていないということを表しています。ただし、投資行動としてはA銀行株を買うということになり、その規模によってはポートフォリオの上位10以内に位置することもあります。

小型株の運用者の場合は、ベンチマークが異なることで、運用上の制約が少なくなることが多いです。それはベンチマークの上位10の銘柄の各構成比率が小さいことが多いからです。たとえば、ベンチマークで上位10の構成銘柄でベンチマークに対して2%を占める銘柄があったとします。運用者がその銘柄が気に入らなければ、全く購入しないという判断もできます。その際には、「マイナス2%のアンダーウェート」をしている状況です。

また、ベンチマークにおける各銘柄の構成比率が小さいということは、将来のパフォーマンスに自信のある銘柄をベンチマークに組みいれられている比率よりも多めに持つ、つまり「オーバーウェート」しようと思えば、大型株ファンドと比べると比較的簡単にできます。組み入れたいと考えている銘柄のベンチマークに占める比率がほとんどゼロに近いような場合には、ポートフォリオの時価総額分のうち2%を購入すれば、ほぼそのまま「オーバーウェート」することができます。

大型株ファンドで、ベンチマークでの構成比率が5%を占める銘柄を2%の「オーバーウェート」にしようと思えば、ポートフォリオの時価総額のうち7%分を購入しなければなりません。実務上は、他の銘柄の売却と合わせて、手間のかかる作業といえます。

こうして考えると、小型株ファンドの保有額上位10の銘柄は、運用者やアナリストが調査を重ねて、自信をもっている銘柄ばかりだということができます。

さて、こうした状況を踏まえて、外資系運用会社の7つの小型株ファンドの上位10をリストし、さらにその中で異なるファンドで保有されている銘柄をピックアップしました。不思議なことに、いくつかの銘柄は複数のファンドで上位10にいるということが分かります。これを銘柄調査のきっかけにするというのは、インテリジェンスのひとつです。

 

一方で、機関投資家に購入されている銘柄は既に良い材料や将来の可能性の多くが株価に織り込まれていると考える必要もあります。そういった銘柄はむしろこれ以上株価が上がる可能性が少ないと考えて避けるというのもインテリジェンスのひとつです。

こうして、機関投資家の公開情報をもとに個別銘柄の調査のきっかけにすることができます。

今後、順次上記の銘柄の調査を開始したいと思います。

執筆 泉田 良輔

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