昨年の暮れ、英国・ロンドンで「G8認知症サミット」が開催された。そして、今年は日本で、これに続くイベントが開催される。新年を迎えるに当たり、この「G8認知症サミット」をきっかけとして、高齢化社会におけるグローバルな課題の解決の考え方について日本医療政策機構の黒川清代表理事にお話を聞いた。

 1回目の今回は、グローバルな課題としての認知症、そして個人やコミュニティの独立について、2回目は、ビッグデータ、そして持続可能な社会保障制度について聞く。

グローバルな課題としての認知症

――「G8認知症サミット」では、2025年までに認知症の治療法を確立することを目的として、調査研究に従事する人々や、研究資金を共同で大幅に増やすという目標を掲げる共同声明が発表されました。

 まず、世界における認知症の現状を簡単に教えて頂けますか?

黒川 現在、世界で認知症を患う人は約3500万人、ここにかかるコストは年間約6000億ドルに上ると推定されています。しかも、有効な治療方法は見つかっていないのです。平均余命は地球規模で上昇しつつありますので、経済的な負担も世界規模で爆発的に増加すると考えられています。

――次に、この「G8認知症サミット」の意義について教えて頂けますか?

黒川 第1に、これまで、各先進国が個別にこの問題に取り組んできたわけですが、もはやこの問題はグローバルな問題として、先進国が一致協力してその解決に取り組むべき、極めて重要な問題だと認識されたと言うことです。

 ホスト国の英国のデビッド・キャメロン首相、ジェレミー・ハント厚生大臣は認知症を大きな政策課題として、熱心に取り組もうとしています。2013年にハント大臣と2時間ほど話をする機会がありましたが、もっぱら認知症対策の話でした。

 しかし、ある面ではもっと重要なことがあります。それは、この認知症という世界中の国々が今後直面する共通の問題について、先進各国がグローバルなパートナーとして共通のプラットフォームを作り、その解決に向けて連携して進んでいくと宣言された、ということです。

 つまり、参加する国々は、ここから資金を提供された研究の情報を共有し、優先順位の高い研究領域を共同で見つけ出すこと、そして、将来に向けたさらなる研究のために、研究データや結果を速やかに利用できるようなグローバルなプラットフォームを作り、そこへのオープンなアクセスを奨励すること、が宣言されているのです。

 この認知症に関するG8の声明をきっかけに、日本が、グローバルなパートナーと、グローバルな課題に関する研究開発を、グローバルなプラットフォームで進めることができるか、試されていると言ってもいいでしょう。