これまで3回にわたってコミュニティー型賃貸を紹介した。ここで紹介したコレクティブハウス、ソーシャルアパートメント(連載第4回)、マストライフ古河庭園、ヘーベルメゾン母力(連載第5回)、ワテラス学生マンション(連載第6回)という5つの事例には、いくつかの共通点が認められる。

 今回はその共通点を整理しながら、賃貸住宅の災害対策に求められる共助の関係づくりに必要なことを考えたい。

コミュニティー型賃貸事例の共通点

(1)コンセプトの提示によるライフスタイルの提案

 まず共通点として指摘できるのは、入居者同士の交流、地域との交流をコンセプトに明確に打ち出している点である。コンセプトを打ち出すことは、その賃貸住宅で実現できるライフスタイルを入居者に提案することと言える。

 多世代、多世帯の共同居住、隣人同士の豊かなコミュニケーション、高齢世帯と子育て世帯の交流、子育ての喜びを共感し合う、学生と地域が交流するなど、ここで取り上げた事例のコンセプトは少しずつ異なるものの、提案するライフスタイルの実現に欠かせない要素として、交流がある。

 一般の民間賃貸住宅では、賃貸住宅のコンセプトを打ち出すことはほとんど無い。賃貸住宅が入居者から家賃や管理費を徴収して提供するサービスは、間取りであり、設備であり、共用部の管理である。

 多くの民間賃貸住宅の場合、間取りや立地といった物的、空間的条件と、設定した賃料から、単身向けかファミリー向けかの違いがある程度であり、それに応じた程度にしか入居者の属性に違いは現れない。建築設計上のコンセプトがある場合もあるが、これらの事例に見るコンセプトは、交流を実現するための空間と管理・運営上のコンセプトである。

 そのため、目に見える空間だけでなく、入居後のライフスタイルに関わる管理・運営のコンセプトを伝えて、そのために必要な賃料・管理費を提示し、それにフィットする入居者を募集しているのである。


(注)これまでに掲載した記事、取材、公表資料、各管理・運営主体提供資料より筆者作成。以下同じ。