10月15日にようやく臨時国会が始まった。経済再生や復興の加速化など、安倍晋三首相の所信表明演説は、なかなか力強いものであった。

 成長戦略の実行や社会保障改革と財政再建、消費税増税、福島第一原発の汚染水問題だけでなく、小泉純一郎元首相が提起したことにより俄然注目を集め始めた原発ゼロ問題など、経済関係だけでも重要課題が目白押しの国会である。

「積極的平和主義」と憲法改正

 所信表明演説では、外交・安全保障については多くは語られなかったが、重要な提起がなされた。

 安倍首相は、先の国連総会演説でも述べたことだが、「単に国際協調という『言葉』を唱えるだけでなく、国際協調主義に基づき、積極的に世界の平和と安定に貢献する国にならなければなりません。『積極的平和主義』こそが、我が国が背負うべき21世紀の看板であると信じます」と述べ、新しい外交・安全保障政策の概念を提起した。

 「積極的平和主義」を推進していくうえで鍵を握るのが、現憲法下での集団的自衛権の行使容認や国家安全保障会議の創設であり、その先にある憲法改正というのが安倍首相の考え方である。

 安倍首相が言うように米ソ対決の冷戦構造が崩れて20年以上が経過し、世界は大きく変わった。なかでも中国の経済、軍事面での台頭は目を見張るものがある。北朝鮮は核実験を繰り返し行い、核兵器と長距離弾道ミサイルの開発に成功している。他方、アメリカの力は間違いなく低下している。日米同盟を基軸にするとしても、平和の確保は「アメリカ頼り」というだけでは、ことは済まなくなっている。

 野党にも安倍首相が言うように、この「現実を直視」した政党になり、「積極的平和主義」の内実を豊かなものにしていくような論戦を期待したいものだが、それはやはりないものねだりのようだ。