週刊NY生活 2013年9月14日458号

 米国の各メディアは9月8日、2020年五輪の東京開催決定について一斉に報じた。ニューヨークタイムズ紙は「政治・経済が世界的に不確実な時に、変革を選ぶより安全を選んだ」と報じた。

 変革とはトルコのイスタンブール開催となればイスラム圏初のオリンピックとなったことを指すと思われる。

 同紙は、日本は福島第一原発の汚染水という環境問題、トルコは国境を接するシリアの内戦と反政府デモ参加者に対する弾圧などの政情不安、スペインは経済不況と高い失業率など経済不安を抱えているなかでの選択であり、2年前に起きた大地震・津波と原発事故を乗り越える日本の努力に対する国際的な投票と見られていたとした。

 結果は「日本の意気込みと合致」し、「中国の陰に隠れがちになっていた日本の信頼を回復するという「安倍首相の努力を肯定するもの」であると報じた。1964年の東京五輪、1998年の長野冬季五輪、2002年のサッカー日韓W杯など大規模国際イベント運営経験も評価されたとしている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も不確実な時代において「国際オリンピック委員会(IOC)は安全・安心」を選んだと報道、「2018年の冬季オリンピックは韓国の平昌で開かれる。オリンピックの動きの中心は極東になった」と書いている。

 AP通信は「福島原発事故の危機の懸念を否定し、適確な判断ができるとの評判を利用した日本が勝った」と報じ、IOCの委員が、原発の汚染水の安全を訴えた「安倍晋三首相のスピーチに説得された」と指摘した。ロイター通信も「安倍首相の演説が東京五輪大会決定への決め手となった」と報じている。

 東京五輪開催決定の報は、米国のメデイアや日本の報道、インターネットで在米邦人社会にも瞬時に伝わった。ニューヨークの邦人社会やニューヨーカーの声を編集部で集めてみた。

 過去の東京大会に思いをはせる人、その後の日本の高度経済成長の歩みと重ねて今回の東京五輪の開催決定を喜ぶ声、東日本大震災からの復興支援の期待に応えたいという前向きの声が多かった一方で、手放しでは喜べない福島第一原発の汚染水問題について大きな懸念とその対応を憂慮する声もまた少なくなかった。

 正直なところ「喜びと同時に心配も」というのがほとんどだ。なかには、オリンピックの開催そのものを疑問視する声や、五輪誘致にかけた多額の税金の使途を批難したり、皮肉まじりに冷ややかな視線で今回の決定を見る者までいた。