第14回サンクトペテルブルク経済フォーラムが、去る6月17~19日に開催された。石油景気に沸いた2年前(2008年6月)のこのフォーラムには内外から8000人が集まったが、国際金融危機の洗礼を受けた後の2009年6月には、その数が3500人に減った。
イノベーションに本気度示した大統領
今年は公称4000人とされているから、これらの数字で、ロシアの経済のどうもはっきりしない回復の速度と、世界のロシア経済への関心の推移や度合がうまく表現されているようにも見える。
昨年ほどひどくはないが、まだ経済回復で先は長い、といったところだろうか。
今回の主要テーマはロシアのイノベーションであり、過去3~4年言われ続けてきたため目新しいテーマとは言いにくい。
しかし、エネルギー資源輸出への過度の依存が国際金融危機でその脆弱性を露呈したという俗説に脅え切ってしまったためか、昨今その実現に向けた大統領とロシア政府の傾斜はつとに強まっている。
そのドミトリー・メドベージェフ大統領の演説は「我々は変わった」と題され、資源輸出主導経済からハイテク国家へ移る一歩を既に踏み出した、と大いに強調するものだった。
「ロシアは今回の国際金融危機以前の状態には戻らない。すなわち10年後には知的産業が国民経済を支える柱になる」という決意を謳い上げ、その話し方も、大統領に成り立てだった一昨年、国際金融危機に襲われ経済が底を這っていた昨年に比べ、はるかに自由闊達なものだった。
エネルギー関連のセッションはわずか2つだけ
最後には、“Dear Friends!”といった、大統領の演説としては珍しいフォーラムの聴衆への呼びかけも行う。「みんなでやろうぜ」という、どこかの国の政党の標語をふと想起させる。大統領就任から3年目に入って、自分なりの自信も持ち始めたのだろう。
イノベーション熱の流れに押されてか、全体で35も設けられたフォーラムの分科会(セッション)で従来なら話題の中心だったエネルギー資源関係のそれは、わずか2つに縮められた。
結果的にはそれで良かったのかもしれない。時あたかも、隣の国の「頑固おやじ」ことベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領がまた駄々をこね、ガスの供給を停止するかどうかの騒ぎが起こってしまったからだ。
そしてその後、4日間の停止騒動が実際に発生した。株主総会を控えていたガスプロムにとっては、いかに大統領が臨席していようとも、フォーラムどころではなかっただろう。