全国民に1万2000円、65歳以上と18歳以下の人には8000円を加算して計2万円を支給するという「定額給付金」。迷走を続けていましたが、受給者の年齢の基準日を2009年2月1日とすることが、2008年12月20日の閣議で決まりました。
しかし、定額給付金に対する国民の評価は芳しくありません。2008年11月の世論調査では「定額給付金を評価しない」と答えた人が6割近くにおよび、評価する人をダブルスコアで引き離していました。
実際、配られる総額2兆円のうち、景気向上に寄与するのはせいぜい1~2割だろうと予測されています。このご時世ですので、大部分は貯蓄に回ることになるのでしょう。1月5日からの国会で審議されるこの法案、このまま通過するのか、それともまだ一波乱あるのか、現時点ではまだ分かりません。
法案が成立するかしないかはともかくとして、この定額給付金をめぐる議論の中に、私はある希望が少しだけ見えた気がしました。
医療費無料化は本当にみんなのためになるのか?
知事や市長の選挙公約にたびたび掲げられる政策として、「子供の医療費無料化」というものがあります。東京都23区のうち8割方の区ではこの制度が導入されつつあります。
ところが2007年度のベストセラービジネス書『スタバではグランデを買え!』で、筆者の吉本佳生氏が詳しく記していたように、広く一般に利益がありそうな政策ほど、実は極めて限定された人にしかメリットをもたらさず、広く一般的に不利益をもたらすだけなのです。
医療費が無料(もちろん薬代も無料です)になれば、当たり前のことですが薬局で整腸剤を買うよりも、コンビニでポカリスエットを買うよりも安くなります。そうなると、昔ならば薬局などで薬を購入し、家で休んで経過を見ていた人たちも、ためらうことなく病院に診てもらいに行くでしょう。極めて合理的な行動です。その結果、普通のお店ならば利用客が倍増してパンクするのが当たり前でしょう。
つまり、子供の医療費を無料化するという政策は、「病院(クリニック)で受診する人たちが増える」→「診察までの待ち時間が数時間に及ぶのも珍しくなくなる」→「ただでさえ少ない小児科医が疲弊して医療崩壊が進む」(実際に過労死する小児科医もいました)→「本当に医療が必要な時に受診することができなくなる」、という流れで現在の医療崩壊をますます加速させる可能性が高いのです。それとともに無料化した分の財政赤字が膨らみ、将来的にはそのツケを子供たちが支払うことになります。