夏がやってくると、韓国では店の前に「パッピンス(かき氷)やってます」の幟が立てられる。日本のかき氷は器に盛った白いかき氷にシロップをのせるのが定番だが、韓国のかき氷の定番は甘い茹で小豆を入れた「パッビンス(氷あずき)」だ。

韓国のパッピンス、先祖は日本

ソウルに新しく登場した「パシヤ」というかき氷専門店の看板

 さて、日本の氷あずきと似ているこの「パッビンス」の元祖はどちらなのだろう。えてして伝統的な風物詩はその国固有のものだと思いがちだが、歴史を辿ると意外なところに由来している場合がある。

 筆者は、これまでずっと「パッピンス」は韓国固有のものだと思っていた。だが、植民地時代に日本から入ってきたという意外な事実を知った。初期の「パッピンス」は、氷を砕いた上に甘いゼンザイをかけて食べたのだとか。

 ともかく、韓国ではそれ以降、パッピンスは夏の風物詩となった。喫茶店やパン屋、時には蕎麦屋、定食屋などでも夏季限定でパッピンスをメニューに加える。また、時代とともにパッピンスの具も多種多様になった。

 初期のシンプルなパッピンスから小豆だけでなく、練乳、ゼリーや缶詰めのカクテルフルーツ、またはソフトクリームを入れたものまで、店ごとにあらゆるパッピンスが現れた。

若者の行列ができている「パシヤ」

 最近の傾向は、健康志向なだけに缶詰めのフルーツカクテルの代わりに新鮮なフルーツを使ったり、甘さも控えめである。そこで、小豆を入れないフルーツとアイスクリームだけのかき氷などもヒットした。

 このように味や健康にこだわる店もある一方で、夏の定番をいいことに大半の店は似たり寄ったりメニューになってしまった。

 また、小豆も中国産の缶詰めを使うなど明らかに手抜きしたものでも高く売れることから、各店の目玉メニューとして定着した。

 そこで舌の肥えた消費者たちは一時パッピンスから離れてしまっていた。それでも夏の風物詩としてのパッピンスは根強い人気を誇っており、パッピンスがおいしいと有名なカフェの前には行列ができた。