「バレニン」で日本の捕鯨が復活?
知れば知るほど食べたくなる鯨肉

2013.07.22(Mon)高成田 享

 仙台の女子大で非常勤講師として食文化論を教えている。約100人の受講生のほとんどは、管理栄養士を目指す健康栄養学科の学生だ。文字通り浅学菲才の講師だから、奥の深い食文化を知識で伝えることは難しいと考え、毎回、食文化と関わる食品を持参し、試させている。

 五穀米、タイのジャスミン米、クスクス、くさや、鮒(ふな)ずし、イナゴの甘露煮、ゴルゴンゾーラチーズ、沖縄の豆腐よう、ラプサンスーチョンの紅茶、仙台の駄菓子・・・。毎回書かせている感想文を読むと、興味を持っておいしいと言ってくれる食品もあるが、くさや、鮒ずし、イナゴなどには手をつけない学生が多い。「栄養士を目指すなら、いろいろな食べ物に挑戦しなければ」などと、挑発するのだが、ほんの一口程度しか用意しなくても半分も余ってしまうことがある。

 ところが、先日、鯨肉の大和煮の缶詰を出したところ、思わぬ人気で、後ろの方に座って学生には、ちゃんと肉が回らなかったということで、追加の缶を開けたほどだった。

 いつもは「匂いだけでダメでした」などというコメントが交じる感想文も「おいしかった」というものばかりだった。鯨肉は初めてという学生もたくさんいたが、彼らを含め好評だったのには驚いた。

 「食べる前は生臭そうだとかイメージしていましたが、ショウガで匂いが消されていたので、おいしくいただけました」

 「とても柔らかくて匂いもなく、とてもおいしかったです。祖母からは硬くて匂いがあると聞いていたので、驚きました」

 「学校給食のときは生臭くておいしくありませんでしたが、今日の缶詰はとてもおいしかった」

被災した水産加工会社の新商品

 この日の缶詰は、木の屋石巻水産(宮城県石巻市)が宮城県遠田郡美里町の新工場で製造したもの。「内陸地に新工場を建設、被災した水産加工会社『木の屋』の冒険」というコラムで紹介したように、この水産加工会社は東日本大震災の津波で石巻漁港のすぐ近くにあった工場が全壊したため、内陸に新しい工場を建てた。そこで最初の缶詰として2013年5月から生産を始めたのが鯨肉の大和煮だった。いわば、出来たてほやほやの缶詰だ。

 大手水産会社が反捕鯨団体からの批判を恐れ、捕鯨や鯨肉加工から撤退する中で、その「すきま市場」でシェアを伸ばしてきたのが木の屋だ。

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