6月22~23日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場が予想していた通り、政策金利および「時間軸」表現を据え置いた。票決は今回も9対1で、カンザスシティー連銀ホーニグ総裁がただ一人反対票を投じた。
今回のFOMC声明文は、景気が緩やかに回復するという見通し自体は維持しているものの、景気の現状について総括判断および個別項目のいくつかで判断を下方修正している。欧州の信用不安問題を念頭に、金融環境について、これまでに比べて悪化したことを明示した。さらに、インフレ懸念が乏しいことについて、エネルギー価格の下落などを引き合いに出した上で、超低金利政策が長引くことの正当性の主張を補強した。
市場がこのところ特に注視している米国の景気・物価の下振れリスク増大と、超低金利政策の一層の長期化観測について、今回のFOMC声明文は、いわば「お墨付き」を与えた形である。そしてそのことは、長期金利が内外でさらに低下する道筋を広げる材料である。
以下、前回4月28日分と今回分について、FOMC声明文の主要な変更点を概観したい。
【景気全体・労働市場】 ~ 下方修正
(前回4月28日声明文)
◇「3月FOMC以降に入手された情報は、経済活動が強まり続けていること、および労働市場が改善し始めていることを示唆している(Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that economic activity has continued to
strengthen and that the labor market is beginning to improve.)」
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(今回6月23日声明文)
◆「4月FOMC以降に入手された情報は、景気回復が進行していること、および労働市場が徐々に改善していることを示唆している(Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that the economic recovery is proceeding and that the labor market is improving gradually.)」
【景気の個別項目】 ~ 金融環境と住宅投資で下方修正
(前回4月28日声明文)
◇個人消費「家計支出の伸び率は最近上向いたが、高い失業率、モデストな収入の伸び、住宅の価値下落、タイトな信用状況によって抑制され続けている(Growth in household spending has picked up recently but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.)」
◇設備投資・新規雇用「設備やソフトウエアに対する企業の支出は顕著に増加した。しかしながら、非居住用建築物への投資は減少しており、経営側は雇用者数を増やすことに慎重なままである(Business spending on equipment and software has risen significantly; however, investment in nonresidential structures is declining and employers remain reluctant to add to payrolls.)」
◇住宅投資「住宅着工は上向いたが、沈滞した水準にとどまっている(Housing starts have edged up but remain at a depressed level.)」
◇金融環境「銀行貸し出しが収縮を続けている一方で、金融市場環境は引き続き経済成長を支援するものになっている(While bank lending continues to contract, financial market conditions remain supportive of economic growth.)」
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(今回6月23日声明文)
◆個人消費「家計支出は増えているが、高い失業率、モデストな収入の伸び、住宅の価値下落、タイトな信用状況によって抑制され続けている(Household spending is increasing but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.)」
◆設備投資・新規雇用「設備やソフトウエアに対する企業の支出は顕著に増加した。しかしながら、非居住用建築物への投資は弱い状態が続いており、経営側は雇用者数を増やすことに慎重なままである(Business spending on equipment and software has risen significantly; however, investment in nonresidential structures continues to be weak and employers remain reluctant to add to payrolls.)」
◆住宅投資「住宅着工は沈滞した水準にとどまっている(Housing starts remain at a depressed level.)」
◆金融環境「金融環境は総じて、もっぱら海外での事態の展開を反映して、これまでよりも経済成長を支援する度合いが低くなった。銀行貸し出しはここ数カ月、収縮を続けた(Financial conditions have become less supportive of economic growth on balance, largely reflecting developments abroad. Bank lending has continued to contract in recent months.)」