今回の参院選で「ネット選挙」が解禁という文字は見かけます。だからといって、何か大きく選挙戦が変わった印象があるかというと・・・と言うより本稿を執筆している7月7日時点ではほとんどないのでは、というのが正直なところです。

 実のところ、現状で「ネット選挙解禁」の1つの狙いは「不法行為」とされ得るものを減らしておくというような、とても後ろ向きな部分にあるようにも思うのです。

 これだけ日本社会に普及してしまったインターネット。そこに一定以上の選挙関連情報は放っておいても流れて不思議ではない。選挙が終わったあとで公職選挙法に抵触する、と立件されるようなものは減らしておいた方が無難・・・といった面も、一方にはあるように思います。

 しかしインターネットが本当に政治、特に選挙のツールとして生きるとしたら、旧来のメディアとの本質的な違いはいったい何だろうか・・・?

 例えばポスターと、新聞と、あるいはテレビの政見放送と、インターネットとが根本的に違うところは何か?

 間違いなく指摘できる1つの特徴は「双方向性」にあると思うのです。

マルチキャストの民主主義

 分かりやすい例で考えましょう。テレビでは公職選挙法の規定に基づいて政見放送が流されます。これは、放送局・電波塔からいわば「放射状」に、一方向的に情報が流され、視聴者はもっぱらそれを受信するだけ。単一の情報発信源から広大な視聴者層に情報を伝達するので、これを「ブロードキャスト」<広く投げかける>と呼ぶわけです。

 これに対して、例えばニコニコ動画のようなインターネット放送はどうでしょうか?

 もちろん発信源が情報コンテンツを流すところは変わりません。しかし、普通のテレビであれば視聴者はもっぱら受け身で見るだけですが、ニコ動やニコ生ではみんなの意見がそのまま(無検閲で!)画面に反映されます。

 これは一対多の「ブロードキャスト」と好対照をなすものと言えるでしょう。多対多の「マルチキャスト的状態」<多数の人が多数の人に向けて投げかける状況>が作られているといってよいと思います。

 こういう状況は、旧来のテレビ政権放送では絶対にあり得ない、インターネットならではの可能性と思います。誤解のないよう急いで記しておきますが、むろん政見放送をネットテレビで、勝手な書き込みが可能な状況で行うべきだとか、そんなことを言っているわけではありません。