クリントン氏は大統領選挙期間中「冷戦が終わった。そして日本とドイツが勝利した」と露骨に日本とドイツに対する非難キャンペーンを実施して勝利した。クリントン大統領は就任後、大胆な経済戦争に打って出る。その際、米国の情報機関による諜報活動を「経済および技術競争の国に向ける」という冷戦後の方向性が決定づけられた。

日本とドイツから平和の配当を回収せよ

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ビル・クリントン元大統領〔AFPBB News

 政権発足後、クリントン大統領がまず手がけたのは「国家経済会議(NEC)」を設置したことである。

 目的は冷戦最大の受益者、日本とドイツから「平和の配当」を回収することであり、これを政権最大の経済戦略とした。CIA本部内には「貿易戦争担当室」まで設置し、手段を選ばず経済戦争に打って出た。このときのCIA長官はロバート・ゲーツ氏が留任していたのである。

 こういった米国の動きは、日本ではなぜかほとんど報道されなかった。冷戦時、漁夫の利を享受しつつ、ぬるま湯にどっぷりと浸かり、惰眠から覚めやらぬ日本は、国益を巡りアンダーテーブルで熾烈な諜報活動が行われる厳しい国際社会の実態が理解できなかった。

 そればかりか、同盟国である米国が日独にかざす刃にも気づかなかった。結局、これが同盟漂流、そして失われた20年の始まりだったわけである。

 1993年だけでもCIAによって発覚させられた贈収賄事件は51件あり、これによって米企業にもたらされた契約金は約65億ドルと公表されている。公表されるのはもちろん、合法で差し支えないものだけである。

 日本企業が外国との商談を直前になって米企業に取られたり、取引を突然、米企業に奪われた事例も数多くあった。これらは既にゲーツ長官が暗示していたことだ。もちろん、非公然活動ゆえ、真相はすべて闇に葬られ、表に出ることはなかった。

 また、法と秩序を口実とした恐喝まがいの巨額訴訟で大損害を被った日本企業も多かった。

 3400万ドルを支払った三菱セクハラ訴訟、燃料パイプ検知器欠陥訴訟で巨額の民事制裁金を要求されたホンダとトヨタ自動車。パソコンのキーを22万回叩けば1回出るか出ないかのバグにより東芝は1000億円支払わされている。これらも諜報組織が絡んでいたと言われている。

 2000年2月には、電子盗聴網システム「ECHLON」の存在が暴露された。これはNSAが運営する暗号解読部隊を発展させた高度な技術を有する全世界通信傍受システムである。このときも欧州議会は産業スパイ疑惑解明のための暫定委員会を設置している。