ニッケイ新聞 2013年6月20日

 昨年末に開店したばかりで南米初進出の100円ショップ「ダイソー」1号店(本社=広島県)が18日夜10時、「バス賃値上げ撤回」「W杯での浪費反対」を訴えたデモ隊の一部が暴徒化し、入り口シャッターが壊され、店内の商品が盗まれるなどの被害を受けた。

 聖市セントロのジレイタ街にある同店のすぐ先には、デモ隊の標的である市役所があり、近隣の商店街がとばっちりを受けた格好だ。6月19日付エスタード紙によれば、周辺地区では少なくとも20の商業施設が同様の襲撃に遭うなどの被害を受けている。

 「シャッターは内側に折れ曲がり、棚が叩き壊されて、ガラスの破片が床中に撒き散らされていた。何もかもぐちゃぐちゃの状況で言葉が出なかった。本当に悲しい」。復旧作業のために略奪の翌日、まだ真っ暗な早朝5時に店に到着したレジナルド・ゴンサルベス店長は、変わり果てた店の様子をみて唖然とした。

 入口左側にズラリと10台近く並んでいるレジ(会計)機は、無理やり引き出しを開けられ、液晶モニター部分も全台持ち去られた。「少しでも早く再開したい。25人がかりで復旧作業を行っている」とその時の様子を思い出しながら、悔しさを滲ませた。

 同店長によれば、6月18日午後10時頃、「ダイソー」店頭に設置されている防犯センサーが何者かの侵入を察知し、自動的に担当スタッフの携帯電話に緊急連絡が入った。

 「もしや」と待機していたその担当は、30分後には現場に駆けつけた。「その時、すでに店内はもぬけの殻。被害は1階のみで、2階部分に荒らされた形跡はなかった」と同店長は担当者から報告を聞いている。

 防犯カメラの記録には、略奪の映像が生々しく映っていたという。同店の金属製の丈夫なシャッターを10人ほどの若者が力任せに蹴って壊し、1人が通れる隙間を作ると、続々と入り込み、次々に陳列品を略奪し、内装を暴力的に破壊する様子だ。

 当日は、あらかじめ大規模なデモ行動が起きることを知っていたので、通常より早い午後5時に閉店し、5時半には全社員を帰宅させていた。だから怪我人もなく、レジの現金も閉店前に回収済みだったという。

 店舗を管理するダイソー・ド・ブラジル関係者は19日に本紙の取材に応じ、「これもブラジルリスクの1つというか・・・。しょうがないこと」とため息をついた。

 同関係者によれば、20日中に店舗は再開可能だという。ダイソー店内の様子は、ニュースサイト「G1」でも取り上げられるなどブラジル国内のメディアでも報道された。

注:聖市=サンパウロ市

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