トヨタ自動車の「製品不具合」「リコール」問題。あの騒動と混乱の中で出てきた対策が、「世界の地域それぞれで不具合を把握、判断して、迅速な対応ができるようにする」という「グローバル品質特別委員会」「地域別品質タスクフォース」なる仕組みの創設だった。
しかし、設計や制御プログラムの基本的内容までを掘り下げないと問題の根が見えないのが、今の「製品不具合」の実態。ということはまず、何度も言っていたように「トヨタのものづくり」そのものを基礎基底から洗い直すことが急務。
一方、各地域で不具合や問題の発生を速やかに収集することは欠かせないが、その現地で、問題の内容を掘り下げることができるのかどうか。それだけの知識と経験と知的能力を持った人間を分散配置できるのか、というところからして疑問だ。
むしろ、ここまで起こったことを見ると、全ての技術情報を持ち、不具合の内容と対策、リコールの判断を下す本社側の対応が「お役所的に」硬直化し、遅々としていたことに問題がある。
同時に、それぞれの国、社会が何を求めているか、どう反応するか、というコーポレートコミュニケーションが一体に機能していない、ということもある。
今回トヨタが決めた対策と組織が、その根本的解決を実現できるアプローチだろうか。このコラムで以前にも解説したリコールの技術的内容、そうした設計や制御の不具合が生まれ、看過された状況を考えれば、焦点がずれた仕組みだと言わざるを得ない。逆に地域別に拙速かつ不統一なままの対応が行われて、品質と企業への信頼をスポイルする可能性がある。
これからの時代、設計と開発は本社側に集中させ、現地との情報交換や判断を早く、密にすること、そして現地と本社の両方に、それぞれの社会の状況を理解した人間を配置して、刻々の対応をコントロールすること。この2点を具体化する方策を組み立てないと。
さらにトップマネジメントまで含めた企業としての認知判断、意思決定を、速くだけではなく、いかに確実なものにしてゆくか。誤りを減らし、小さくし、起こったとしてもいかに敏速に正すか・・・。
言うならばコーポレートガバナンスを強固なものにすること。それも一般論ではなく、自動車を造り、販売する世界企業として、しかも日本に本拠を置く組織としてどうするか、が最大のポイントなのではないだろうか。
ことさら「お客様視点」を強調する必要はあるのか
また、このところの「組織と業務の見直し」の中で必ず掲げられるフレーズ、「お客様視点で・・・」という一節も、いかがなものかと思う。
元々、自分たちのプロダクトを購入し、使ってくれる人々が何を思い、どう感じるか、そこに気を配るのがトヨタの、そして日本の特質であり、アドバンテージだった。それが最も具体的な形で現れたのが、製造品質のカイゼンである。ただ、自動車という「個の移動空間」の本質を形作る資質において何を提供するか、というところは、深く掘り下げられることなく進み続けているわけだが。