「木材利用ポイント事業」というのをご存じだろうか。自動車や家電品のエコポイントと同じように、地域の木材を一定以上利用した住宅を建てた人などに、いろいろな買い物ができる「木材利用ポイント」を支給する制度だ。
林野庁が2012年度の補正予算で創設した410億円規模の事業で、2013年4月1日から2014年3月末までに着工した住宅などが対象になっている。1棟当たり30万ポイント(東日本大震災の被災地は50万ポイント)で、1ポイントは1円相当というから、住宅の新築や改築を考えている人には、関心の高い制度だろう。
ポイント制度の創設に慎重だった林野庁
いまのところ新築も改築も考えていない私が関心を持っているのは、こうした制度の導入を求めた委員会のメンバーになった経緯があるからだ。
林野庁が2012年に発足させた「森林関係の地球温暖化対策を考える会」で、同年7月に「日本の森林非常事態宣言」と題した決議文を出した。その中に、「需要拡大の起爆剤となる国産材利用のエコポイントの創設」というアイデアが盛り込まれたのだ。
この会合で、ある委員が国産材の利用を広げる仕組みとしてポイント制度を提案し、私も賛成した。とはいえ、正直に言うと、実現するとは思わなかった。役所の姿勢が慎重だったためだ。
役所が新しい制度を導入しようとすると、審議会などでアイデアが出たことにするが、裏では前もって役所側が委員に依頼しているなど「出来レース」のことが多い。逆に、委員から出たアイデアで役所が想定しなかった場合は、いろいろな理屈をつけて取り上げない、ということが多い。これは私の独断だが、役所の審議会とか委員会とかいうものは、そんなところが多いのではないか。
林野庁側がポイント制度に慎重だったのは、国産材を優先させると、海外の木材輸出国から不公平だと批判される恐れがあるからだ。また、自動車や家電品と違って、生産者も施工者も多く、認証が煩雑などの問題もあったからだろう。
今回の仕組みを見ると、海外からの「保護主義だ」という批判をかわす工夫がされている。例えば、「国産材」ではなく「地域材」となっていて、都道府県が対象となる木材を認証することになっている。