「ソーシャル化する社会」連載30回目の節目にあたり、慶応義塾大学総合政策学部・環境情報学部(SFC)創設の中心的人物であり、日本のマーケティングにおける第一人者である井関利明慶応義塾大学名誉教授と小川和也による特別対談を4回にわたってお届けしている。

 第3回目の本稿では、「ソーシャルメディアを通じた企業と生活者の関係構築」を中心にお伝えする(過去の連載もご参照ください:第1回はこちら、第2回はこちらから)。

メーカーとユーザーがフラットな関係になる時代

井関利明慶應義塾大学名誉教授(撮影:前田せいめい、以下同)

小川:ソーシャルメディア時代の企業と消費者の関係をどのように考えていますか。

井関:第1カーブ時代のマーケティングでは供給サイド・生産者サイドが作ったものを、メディアを通じて消費者に一方向的に与えていたわけです。

 そして消費者は、「隣の家では新しい○○を買った」というように、家電や生活用品をどれだけ我が家に仕入れていくか、常に隣近所を見て、どことなく競争をしていた。

 第2カーブの時代に入ると、顧客志向と顧客満足の意識が強まった。そこで、ユーザーのメンバーシップやポイント制度などが盛んになったわけです。

 さらに第3カーブ時代に入ると、メーカーもユーザーも同列に存在する、そのような状態が生まれたのです*

*井関名誉教授は、マスメディアの変遷を3つの「カーブ(曲線)」で捉えている。第1カーブはマスメディアが一方向的に情報と知識を流す時代、第2カーブはWebサイト等でそれまでの受け手が発言し、放送や雑誌でも参加性が増し始めた時代、第3カーブは不特定多数の発信と自己表現が可能なソーシャルメディアの時代(詳しくは第1回参照)。