そして日米両国チームは合同で以下のような見解をまとめたという。
・もし米国が北朝鮮の意図を探るためでも中国政府と協議することは、日米同盟への日本側の信頼性を失わせる。
・北朝鮮の先制攻撃を防ぐためには日頃から米国と日本の共同の北朝鮮攻撃軍事戦略を可能にしておく必要がある。そこには韓国の協力をも得て、北朝鮮への効率的な抑止態勢とする。
・米日合同の北朝鮮空爆能力の確保はいまの日本の軍事能力では難しいが、F35戦闘機を自衛隊が導入すれば可能となる。日本は現在はその種の合同作戦には空中給油と情報収集や偵察の能力しかない。
・米日両国は、第2次朝鮮戦争が北朝鮮の日本攻撃によって始まるという有事計画を具体的に想定すべきだ。米国がその想定の下に日本と韓国との協力のための対話を実行すること自体が北朝鮮への抑止になる。
・北朝鮮による2010年の韓国の大延坪島への砲撃事件では、米韓合同の反撃計画が明らかとなり、北朝鮮が韓国への同種の限定的な攻撃を断行する確率は大幅に減った。だが日本にはその種の反撃計画はないので、北朝鮮は日本攻撃の誘惑に駆られる可能性が高い。米国は日本との共同の反撃態勢を築くべきだ。
中国の横槍にも注意と監視が必要
この報告を公表した研究機関「外交政策イニシアティブ」は、このウォーゲームの結果とは別に独自の提言を以下のように述べていた。
「今年、米日両国はこの種の課題を正面から協議する機会に恵まれている。日本が独自にその防衛政策や自己規制について再検討するだけでなく、米日両国は、1997年に更新されたきりの日米両国共同防衛ガイドラインの再検討にも取り組むことになっているからだ。米国はこの日米協力に韓国も加わらせることに努めるべきだ。この場合も北朝鮮の日本攻撃というシナリオへの対応が主眼となる」
「オバマ政権は日本や韓国との安全保障協議には難色を示すかもしれない。そうした協議が中国の神経をさかなですることを恐れるからだ。中国にしても、米国に圧力をかけて、その種の対日、対韓の協議を止めさせられるかもしれないと判断すれば、強い圧力を実際にかけてくるだろう。米国の議会はそうした動きを十分に監視していく必要がある。北朝鮮への対応はとにかく相手の挑発よりも先行して、対応策を考えておかねばならない」
こうしたキメ細かな米国側の動きを見ると、日本にとっても北朝鮮との衝突での最悪事態までを想定した危機管理、戦争準備の努力が欠かせないように思われてくる。