北朝鮮の労働党機関誌が「横須賀・三沢・沖縄のアメリカ軍基地もグアムやアメリカ本土同様に朝鮮人民軍のミサイル攻撃圏内にある」と、日本国内の具体的地名まで挙げて対米ミサイル攻撃の威嚇をエスカレートさせている。

 金正恩第一書記が「アメリカ本土攻撃作戦」といった作戦地図を背景に軍幹部と作戦検討をしている写真を発表するなど、国際軍事サークルでは噴飯物の対米威嚇を続けている北朝鮮だが、日本国内の米軍基地を口にしたことは、「米本土は無理でも日本の米軍基地ならば攻撃できる」という本音を表したと言えよう。

アメリカ本土攻撃はまだ無理

 いくら朝鮮人民軍が「第1号戦闘勤務態勢」に突入してアメリカを攻撃すると息巻いてみせても、銀河3号(2012年12月12日に光明星3号を衛星軌道に投入させたロケット。テポドン2型大陸間弾道ミサイルの改良型と見られている)の打ち上げに成功した程度では、アメリカ本土(48州)やアラスカはおろかハワイやグアムですら完全に弾道ミサイル攻撃が可能になったわけではない。

 確かに、北朝鮮のロケット自体の射程距離だけを考えると、グアムやハワイそれにアラスカすらも射程圏内に入ってしまっているかもしれない。しかし、弾道ミサイル攻撃をするには、ミサイルに装着する弾頭が完成されていなければならない。大陸間弾道ミサイルにせよ、ハワイやグアムを攻撃する弾道ミサイルにせよ、朝鮮人民軍がそれらの攻撃を敢行する場合にはごく少数のミサイルを発射することになるわけであるから、当然弾頭には核弾頭が装着されることになる。

 北朝鮮が強行している核実験の分析情報によると、いまだに北朝鮮が手にしている核爆弾の威力はアメリカ軍が広島攻撃に使用した原爆の半分程度の7キロトンと考えられている。ちなみに現在、アメリカ海軍戦略原潜に搭載されているトライデント2型弾道ミサイルに装着されている核弾頭の威力は475キロトンである。

 また、核爆弾を弾道ミサイル弾頭へ搭載するための小型化技術や、核弾頭が大気圏に突入する際の各種衝撃処理技術、それにミサイル防衛システムを撹乱するための「おとり」弾頭を含んだ多弾頭化技術など、アメリカ領域を実際に攻撃するにはクリアしなければならないハードルが数多く残されている。

対日攻撃能力は十二分にある

 しかしながら、日本国内のアメリカ軍基地への弾道ミサイル攻撃となると話は別である。この場合は、少数の核弾頭搭載弾道ミサイルではなく通常弾頭搭載弾道ミサイルを大量に用いて攻撃することになる。実際に朝鮮人民軍は、この種の攻撃に適した弾道ミサイルを600基ほど保有している。すなわち、最大射程距離800キロメートルのスカッド-ER短距離弾道ミサイルを350基以上、最大射程距離1300キロメートルと推定されているノドン-A中距離弾道ミサイルを250基以上、それに最大射程距離が3000キロメートルとも4000キロメートルとも言われている最新のノドン-Bあるいはムスダン中距離弾道ミサイルが数十基である。

北朝鮮の対日攻撃ミサイル
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