モバイル・ワールド・コングレスの会場には、国や地域別のブースもある。イギリス、フランス、カナダなどなど。
こうしたブースには面白いベンチャー企業がたくさんいて、毎年まわるのが楽しい。今年、こうした小さなブースで出合ったなかで面白い企業をいくつか紹介しよう。
「モバイル+クラウド」の顧客管理サービス:Push Science社
Push Science社はカナダ発。2010年にモバイル広告や金融分野で経験のある若者が設立した。
現在、従業員はまだ10名に満たないが、カナダ以外にもビジネスを広げる活動に積極的だ。昨年の ad:tech Tokyo でも出展していたらしい。
そのとき来日したシブ・カマル(Shiv Kamal)氏は「ぜひ、日本でも顧客を見つけたい」と言う。
Push Science社の提供するサービスは、小売り店舗の顧客サービスを改善するプログラムである。
今回のモバイル・ワールド・コングレスで発表された同社のサービス「Push CSP」は、モバイル機器から店舗での商品別売上、接客時間、顧客滞留時間などをリアルタイムで確認できる。
このサービスはSaaS(Software as a Service)と呼ばれるクラウド環境で提供される。つまり、顧客は自分たちの店舗数や利用するデータ分析の種類を自由に取捨選択できるので、商店街にある中小の小売店鋪でも利用可能だ。
いままで、Zoho社といった法人顧客の管理(CRM:Customer Relation Management)のSaaSを提供するベンチャーはたくさんあった。
Push Science社は、B2Cビジネスに特化した「モバイル+クラウド」の顧客マネジメントサービスという点が新しい。
起業のきっかけは、「アップルストアのサービスを他でも体験できないか」という点だという。
「アップルストアに行くと、その場でタブレットを見ながらいろいろ説明してくれるでしょう。お客さんを待たせることがない」
「アップルストアでは店員と来店客を仕切るものが何もない。通信キャリアの店舗に行くと、店員がカウンターの向こうに座り、デスクトップのパソコンを見ながら処理をする。来店客の順番待ちも長いでしょう」