自民党政権・民主党政権を問わず歴代の日本政府は「日米同盟の強化」を口にしている。とりわけ安倍政権は民主党政権によって破壊された日米同盟を復活させ、より一層強化させる、と繰り返し明言している。

 確かに、過去半世紀以上にわたり「日米同盟に頼りきる国防」を国是としてきた日本にとって、現状では日米同盟が国防の基本であることには疑いの余地はないし、実質的な空洞化が進んでいる日米同盟を強化する必要があることもまた事実である。

 先日、ホノルルで太平洋艦隊や太平洋海兵隊関係者たちと日本を取り巻く軍事情勢に関して話し合う機会が数回あったが、「現政権に限らず歴代日本政府が口にしている『日米同盟の強化』とは一体何を意味しているのであろうか?」ということも(毎度のことながら)話題に上った。

 日本側が口癖のように繰り返す「日米同盟の強化」の内容が軍事的にはっきりと具体化されないため、アメリカ側には「アメリカの歓心を得ることによって、尖閣諸島をはじめとする日本防衛のためにアメリカ軍の救援を最大限に獲得できるような状況を維持する」ことを意味しているように受け止められかねない。

普天間基地問題解決で日米同盟は強化されるのか?

 歴代日本政府が「日米同盟の強化」の具体的行動として力を入れているのが、普天間基地移設問題をなんとか解決することである。しかしながら、これでは軍事的には“話にならない”と言っても過言ではない。

 アメリカ海兵隊をはじめとして普天間基地移設問題に直接関与し、移設を前提にして日本周辺の軍事戦略を構築してきた人々にとって、普天間基地移設問題では日本側に10年以上にわたって「だまし続けられた」のであり、それに鳩山民主党政権がとどめを刺す形で“ぶち壊した”のであった。第2次安倍政権がリーダーシップを発揮して、そのような状態を振り出しに戻したからといって、「だまし続けた」あとの「何となく決着しそうになった状態」に戻るのであって、それによって日米同盟が強化されるわけではない。