週刊NY生活 2013年3月9日434号
「米国に英語を学びに来た若者がパトカーに命を取られたことは非常に無念です。警察からのお詫びはもちろんありました。それは事故を起こして子供を死なせたということについての謝罪です。ただ、自分たちのミスでこういうことを起こしたということに関する謝罪ではありませんでした」
さる2月21日未明、クイーンズ区アストリアの路上で語学留学で滞在していた日本人男性、小山田亮さん(24)=香川県丸亀市出身=が緊急出動中のニューヨーク市警察のパトカーにはねられて死亡した。
父親の司さん(60)と姉の智子さん(34)ら家族が来米し、今月1日午後1時、マンハッタンの飯島真由美弁護士事務所で記者会見して悲しみと苦渋の心境を語り、市警に対し真相解明への十分な調査を求めた。
同席したジェフリー・キム弁護士は市警とニューヨーク市に対し、800万ドル以上の損害賠償の支払いを求める通知を送付したことを明らかにした。対応次第では訴訟を起こす構えという。
キム弁護士は市警に現場周辺の防犯ビデオ映像やスピード監視装置の記録などを保全し、可能な限り速やかに公表するよう求めると同時に、「今回の事件で、米主要メディアの報道がほとんど見られず、市長や警察署長、市会議員や選挙で選ばれた公職にある者からの正式なコメント、お悔やみの言葉がないことは恥ずべきことだ」と語った。
警察の事故レポートでは「21日午前零時43分ごろ、911の通報を受けて緊急出動したパトカーが2分後の同零時45分ごろ、40番街を東側に向かって走っている時に、10丁目と11丁目の間で40番街を北側に横断しようとした男性と道路の真ん中で衝突した。緊急医療隊(EMS)が出動して現場に向かったが、現場で男性の死亡が確認された。調査は続行中。死亡したのはリョウ・オヤマダ、男性、24歳、日本人」と事故当時の状況を記している。
事故後、警察が地元住民と月に1回開いている会合の席で、警察からの出席者が会場からの質問を受けて「パトカーはサイレンを鳴らしていた。サイレンを鳴らしていたということは警告灯もつけていたということだ」と説明している。しかし、事故当時、現場で事故を目撃した住民の証言はその説明とはまったく異なっている。
目の前で目撃したカリエク・ブラウンさん(29)は本紙の取材に対し「警察官は彼を助けようとはしなかった。オレたちが助けようとしたくらいだ。警察官は『クソッ』となんども舌打ちしていて、目撃した人たちと言い合いになったんだ」と話す。
ルイス・テルネオさんは「彼はまだ、シェイキングしていたんだ。大丈夫かって声をかけたけど、だめだった。通りの向こうにストップサインがあるが、パトカーはそのストップサインを無視して暴走してきた。サイレンは鳴らしてなかった。静かに暴走していた」と話した(動画「週刊NY生活TV」35面参照)。