昨年秋、平和裏の政権交代を成し遂げたはずのグルジアで再び政治的緊張が高まっている。ビジナ・イヴァニシュヴィリ新首相率いる「グルジアの夢」政権によるミハイル・サーカシビリ大統領派のパージについては前回も若干触れたが、すでに「詰んだ」として全面降伏を迫る新政権に対して、大統領派「国民運動」も一定の権力と保障を求めて抵抗を続けている。
半年に及ぶ両者の激しい攻防は今月末から来月初めにかけて一定の決着がつく見通しだが、その過程で一層の社会混乱を招く可能性も皆無ではない。
グルジア現代政治のダイナミズムを見ていくと、最近政権交代を経験した日本や他の国と比べても、権力闘争の生々しさを格段強く感じさせる。
また、ヨーロッパ志向や民族主義、民族紛争の問題など、ロシア・旧ソ連情勢を考えるうえでも参考になることは多い。
もう少し広く考えれば、米国の予算に関する大統領と議会の攻防に似ていないわけではないが、以下で見るように政治的な「死活」問題も絡んでいる。ここでは、これまでの流れと争点について簡単に紹介したい。
「すでに勝負はついた」大統領を追い詰める首相
2月26日、ビジナ・イヴァニシュヴィリ首相はミハイル・サーカシビリ大統領宛公開書簡の冒頭で次のように述べている。
「グルジアにおける権力問題の決着はすでについている。したがって、何か議論を必要とする政治的対立相手としてあなたに呼びかけるものではない」
さらに、書簡の終わりの方では後述する焦眉の憲法改正問題について「この改正に賛成する者は国家に対する奉仕を続けることができる。過ちの訂正が認められ、より良い政治的未来のチャンスを手にする」とした。
しかし、もし反対すればどうなるのか?
続けて「この改正に反対する者は9年間、あなた(=サーカシビリ)のグループの誰であれ行った行為の完全なる政治的責任を引き受け、これを一生背負い続けることになる」ときつい警告を発している。
ここで、問題となっているグルジア国憲法改正の焦点とは、首相の任免を自由にできる現憲法における大統領権限についてである。現在、大統領は首相を罷免し、議会が3度大統領の推す候補を認めない場合は、議会を解散することができる。
しかし、グルジアは今年(2013年)秋に新大統領を選出した後、首相に強力な権限を与える議会制共和国への変更を2010年に決定している。