先週の未婚の母の話に引き続き、今週も、ヨーロッパで既成の家族の概念がどんどん崩れていくことについて。
ドイツでは、2001年、SPD(ドイツ社民党)と緑の党の連立政権時代、同性愛のカップルが結婚できるようになった。それ以来、同性カップルは、まだ完全には“夫婦”と同格ではないが、“夫婦”に準ずるものとなり、その権利が大幅に強化された。
例えば、1人が病気になれば、もう片方は家族として医者の説明を受けられるし、また、1人が死亡すれば、残された相手は遺産の相続も可能になる。その他、さまざまな夫婦の義務と権利が、同性の夫婦にも備わったのである。
2010年、ドイツには、連邦統計局の資料によると、夫婦として登録して暮らしているゲイ、あるいはレズビアンのカップルが、2万3000組いるという。
市民権を得たドイツの同性カップルに残された、養子問題
ドイツでは、結婚したい男女は、役所にその旨を申し出て、出廷の時間、つまり、婚姻の日を決める。当日は、花嫁と花婿が、保証人2人他、親族、友人などを伴って役所へ出向き、担当の役人の質疑応答を経て結婚が認められ、めでたし、めでたしとなる。
花嫁と花婿は、たいていタキシードとウエディングドレスで着飾っており、結婚したての彼らはそのまま役所の前の広場などに繰り出し、シャンペンを開けて乾杯。午前中に役所の前を通ると、そういうおめでたい光景をよく見かける。
2001年からは、それと同じ光景が、男女ではなく、同性のカップルでも見られるようになった。当時、男女のカップルではなく、むくつけき大男が2人、役所の前で幸せいっぱいでキスをしている写真などが、よく新聞に載ったものだ。
しかし今では、それも珍しくもなく、ニュースにもならない。ゲイやレズビアンは、思ったよりもたくさん身近にいることも分かってきた。
なお、教会での挙式はというと、同性カップルの場合、カトリック教会では絶対に挙げてもらえない。教会での挙式に法律的な意味はないが、一部のカップルにとっては役所の結婚よりも大切なものだ。
だから、それを悲しく思う同性カップルはいるかもしれないが、カトリック教会は、同性愛どころか、再婚も認めていないのだからどうしようもない。
さて、そんなわけで、ほぼ市民権を得たドイツの同性カップルではあるが、法律的にはまだ従来の夫婦とすべてが平等なわけではない。一番大きな違いは、養子をとれないことだ。