欧州では、路上で物乞いをする移民が増え続けている。各メディアが「ツナミのように押し寄せる移民」だの「エスカレートする侵略」だのと書きたてるほどだ。
北欧でも、これまでストックホルムやコペンハーゲン、オスロなど首都圏付近の大都市でしか見られなかった物乞いが、最近はより規模の小さい都市でも目につくようになった。
ほんの数年前までは、物乞いの大半が中年以上、高齢であったように思うが、近年は10代から20代の若者の姿も目につく。筆者は高校で日本語を教えているが、教室に座っている生徒たちとほぼ同年代の若者たちだ。
彼らの多くは、ルーマニアやブルガリアなど東欧からの流入者だ。
家族が生き延びるために物乞いするしかない若者
筆者が住む人口10万ほどの小都市の路上で、通行人から小銭を集めているのは21歳のアントンだ。ルーマニアから来たという彼は、高校で電気技術の勉強をしたという。
「家族が生き延びるために」母と16歳の弟とともにスウェーデンに来たのは昨年12月。その後の数週間、汚れたジャケットにくるまり、ひたすら路上に座り続けている。ジャケットは彼の母がゴミの中から見つけてきたものだ。
「仕事はないし、社会からも何の援助も得られない。自分の家族のために、こうして物乞いをするしかない」「何か仕事がしたい。とにかく仕事が欲しい」
彼が子供の頃に漠然と抱いていた夢は、職を得て自分の家を建てることだった。兄弟7人のうち、高校を出たのは長兄である彼だけだ。しかし卒業しても職はなく、結局こうして他国まで来て「出稼ぎ」するのが唯一彼にできることだ。
1日こうして座り続けて、集められるのはだいたい200クローナ(3000円)程度。大都市の路上にはすでに多くの物乞いがあふれているので、この小都市に来たという。
以前にノルウェーの都市部で物乞いをしていた父は、誰がどの場所に座るかをめぐり、物乞い同士の争いに巻き込まれたことがある。