1 はじめに

 21世紀の最大の課題は言うまでもなく、今や世界第2の経済大国となり、軍事費を増大させつつ、アジアの覇権を着々と築きつつある「異形の大国」である中国に、いかに立ち向かうかである。

 そのような観点から、JBpressに「中国重視から大転換の米国、この好機を逃すな、中国の侵略を許さないためにASEAN、インドとの強い連携を」と題して投稿した(2010/12/13)。

 野田佳彦・民主党政権では思い切った戦略転換ができなかったが、昨年末誕生した安倍晋三政権は着々と対中包囲網の構築に動いているやに思われる。本稿は、動き出した対中包囲網の状況を俯瞰し、その包囲網を確固・確実にするために我が国が採るべき方策を提示せんとするものである。

2 既掲載論文の骨子

 勃興する大国中国は、その経済力を背景に、軍事力を増強し、東シナ海や南シナ海の内海化による資源などの獲得、西太平洋の覇権獲得を狙っている。

 これに対して、米国は明確に戦略転換をし、対中牽制に乗り出した。

 日本としては、この機に日・韓と印を両翼とし、グアムを扇の要とした戦略体制を築くべしとし、台湾~ASEANを弧の一部とし、後方拠点としての豪州も含む環太平洋連携の構築を提唱した。

3 対中包囲網の狙い

 自由と民主主義を基調とする価値観を共有する諸国との連携により、まずは、中国のアジア・太平洋地域における覇権獲得を直接的に阻止し、中・長期的には、唯我独尊、傲岸不遜、傍若無人、威丈高、独善的、強圧的・高圧的な中国の態度変化を促し、協調的国際社会の一員足らしめることにある。

 譲歩や妥協では、中国の覇権阻止はもちろん、中国の態度変化は決して期し得ない。