ニッケイ新聞 2013年1月8日
聖市南部のカンポ・リンポで4日夜、今年初の大量殺人が起き、バールにいた人7人が死亡し、2人が負傷した。
6、7日付エスタード紙や7日付フォーリャ紙などによると、事件が起きたのは4日の23時20分頃。3台の車で乗りつけた覆面の男達14人が、バールにいた人々に銃を乱射し、同地区では有名なラップ歌手のラウエルシオ・デ・ソウザ・グリマスことDJラー(33)ら7人が死亡、2人が重軽傷を負った。
現場は、昨年11月、軍警5人が追跡中だった男性を射殺した映像を、グローボ局のファンタスチコが放映した事件の現場のすぐ近くで、5日朝には警察が、殺された人の中に11月の事件を録画した人物が含まれていたと発表した。
これは、DJラーが11月の事件は自分が録画したと発言していたためだが、警察は、近隣住民に聞いた結果、5日午後には、DJラーが録画したという確証はなく、二つの事件の関連性は現場が近いという事だけと発表しなおした。
だが、近隣住民の間では今回の事件は警官による報復との見方が依然強く、5日に行なわれたDJラーの葬儀でも、住民達が抗議行動を行なうと話している。
カンポ・リンポは昨年10月以降表面化した“暴力の波”に絡むと見られる事件が多発している地区の一つで、DJラーらのラップ歌手達も、警察による暴力への批判を込めた歌詞を多用。約100人が参列した葬儀でも、彼が所属するバンド“コネクソン・ド・モーロ”の“モーロ・トゥリステ”が歌われた。
「今日の丘は悲しみに包まれ、笑顔なぞ見られない。また1人、母親が泣いた」という繰り返し入りの歌は、警察と麻薬密売者らの抗争が関係のない市民まで巻き込むという都市郊外で頻発する悲劇を歌ったものだ。
DJラーは施設におもちゃを届けたりする社会活動にも参加しており、15年前のバンド創設以降、特別な敵はなかったという。今回の事件ではバールで買い物をして帰る途中の人2人も犯人らに命じられて現場に戻り、犠牲になった。負傷者の1人は手術を要したが、命には別状はないという。
大量殺人により多くの母親が涙に暮れた5日は他の犠牲者2人の葬儀も行われたが、フォーリャ紙によると、2012年に聖市とその周辺で起きた大量殺人事件は、2011年の倍の24件。犠牲者も41人に対し80人とほぼ倍増したが、捜査によって全容解明、犯人逮捕に至ったのは、軍警6人が逮捕された12月26日の事件のみである事も住民らの不安を大きくしている。
注:聖市=サンパウロ市
(ニッケイ新聞・本紙記事の無断転載を禁じます。JBpressではニッケイ新聞の許可を得て転載しています)