週刊NY生活 2013年1月1日第425号
Written by くろすとしゆき
「とんかつ=日本ふうの豚肉カツレツ。明治初年の西洋料理にあったが、『とんかつ』の名を使ったのは、明治4(1871)年、上野の『ぽんち軒』である。とんかつは肉が厚く、やわらかいのがよい」(『味覚辞典』)
とんかつのルーツが西洋料理とはだれもが知っているが、いまやあれは日本料理である。『味覚辞典』もそれを認めている。また、豚カツと書くよりも「とんかつ」と平仮名書きが似合うし、ナイフ、フォークをガチャつかせるよりも、はしで食う方がうまい。
スープよりみそ汁、パンよりもご飯とのコーディネートがしっくりくることをみんなが知っている。とんかつは明治初期に誕生し、142年経ったいま、完全に「和」になった。これを進化というべきかどうかは分からないが、「和魂洋才」のひとつの表れといえるだろう。
長々と、とんかつの話を振ってしまったが、とんかつを「アイビー」と置き換えてみたかったからだ。
だれもが知っているように、ファッションとしての「IVY」は米国生まれの世界に誇れるアメリカン・ファッションの一つである。最先端の流行として日本の服飾誌に紹介されたのは1954年、雑誌名は「男の服飾読本」(現MENSCLUB)創刊号であった。
巻末の「男の服飾用語事典」アの項目にこうある。
「アイヴィー・リーグ・モデル=英語。ブルックス・ブラザーズ・モデルともいう。アメリカの尖端的な流行型の1つで、東部の大学生や卒業生に支持者が多いので、俗にユニヴァシティー・モデルとも呼ばれる」
「ストレート・ハンギングで、肩は狭めでパッドはなしか極めて少量という極端な自然肩、上衣は3つボタンか4つで、2つボタンはない」
「ズボンはかすかにテーパードして細め、プリートなしが普通。尖端的ではあるが狙いは濃厚な保守趣味で、マディスン・アヴェニュの服装などといわれるほど都会的なもの」(原文のまま)。