即応予備自衛官の活躍が新聞などで大きく報道されたのは昨年の東日本大震災直後であった。現役自衛官10万人超が災害派遣されることになり、もともと手薄な日本防衛が一段と手薄になることは目に見えていた。そこで制度が発足してはじめて即応予備自衛官が招集され、期待以上に活躍したのであった。

周辺国の軍事力増強

 国際情勢を一顧もしない財務官僚は、「一律10%削減」や辻褄合わせの「シーリング」という安易な官僚的手法で自衛隊予算を年々削減してきた。

 平成9(1997)年度をピークに減少に転じ、平成12(2000)~14(2002)年度は一時的に微増したが、その後は今日に至るまで10年間(通算16年間と言っても過言ではない)にわたって低下してきた(『平成24年版 防衛白書』および『23年版防衛ハンドブック』による、以下同じ)。

 同盟国の米国も過去5年間は国防費を微増させたが、今後10年間は大幅な減額が課されている。

 他方で、中国は公式発表だけでも1989年以来24年間毎年10%以上の伸び率で国防費を増大させ、今年度の予算は23年前の30倍以上である。こうして米大陸に届く移動式多弾頭ICBMやステルス戦闘機なども装備し、つい先日は空母を就役させ、米国に圧力をかけるまでになった。

 また、韓国・北朝鮮も軍事費を5%前後伸ばしながら近代化を図ってきたし、ロシアに至っては2009年度が27%という驚異的な伸び率であったため翌年度こそ5%止まりとなったが、その前後は20%台で現在に至っている。

 こうした結果、周辺諸国の軍事力が著しく増大し、近代化と十分な量の兵器装備を取得しているにもかかわらず、日本は国際情勢に我関せずの状況であった。露中韓の大胆極まる「日本の離島」に対する行動は、こうしてもたらされた軍事力の著しい格差による面も大きいであろう。

 いざという時に最小限必要とされ、長い間維持されてきた18万人の陸上自衛官定数は、架空的数値に変質してしまい、「平成8年以降の防衛計画の大綱(通称07大綱)」では、可能と見込まれる充足数を定員(16万人)とする姑息な方法で糊塗した。

 しかも内訳を見ると、常備自衛官は14.5万人に約20%も削減され、新たに設けられた即応予備自衛官1.5万人を補充するとしている。

 日本を取り巻く国際情勢、なかんずく極東アジアの情勢が厳しくなり、日本が積極的効果的に日本の防衛を実施するため防衛庁を省に昇格させる必要性が高まっていた時期(実際の昇格は2007年1月)に、定員が削減される状況になったのである。

 実際、16大綱では15.5万人(常備14.8万人、即自0.7万人)となり、22大綱では15.4万人(常備14.7万人、即自0.7万人)と性懲りもなく削減してきたのである。