迷走に迷走を重ねた鳩山政権は8カ月あまりで幕切れとなった。6月7日にも発足する新内閣が取り組む積み残し課題はいずれも難問ばかり。

 その1つが、民主党の看板政策だったはずの「高速道路」だ。

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迷走を続け、いったい、どこへ行くのか・・・〔AFPBB News

 2010年通常国会に提出した法案は、高速道路の建設を求める小沢一郎前民主党幹事長の要望に配慮し、「料金割引のために投入した国費のうち、約1兆4000億円を建設に回す」としている。

 高速道路の新規着工に税金を注ぎ込むことは、道路公団民営化の精神に反する。さらには、「実質値上げになる」とする民主党の反発で法案成立が危ぶまれていたところに鳩山と小沢の辞任が重なり、まったく先が見えない状態。マニフェスト(政権公約)に掲げた高速道路の無料化方針も含めて、民主党政権の高速道路政策は、いったいどこに行きつくのか。(文中敬称略)

料金プール制で債務拡大

 民主党は2009年の総選挙直前、マニフェストの下書きとなる「政策集」(INDEX)で、「国として整備すべき高速道路の選定」「道路事業の費用便益分析の厳格化」の方針を盛り込んだ。高速道路の建設を抑制し、「コンクリートから人へ」という考え方を実現しようとしたのだ。

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高速道路〔AFPBB News

 高速道路の建設抑制を目指す民主党のスタンスは一貫していた。道路特定財源の是非が話題となった2008年の通常国会では、「1万4000キロメートルの高規格道路を整備」という政府方針を1987年から継続している点について、「バブル時代の建設計画を無分別に続けている」と攻撃していた。

 確かに歴代自民党政権は拡張一辺倒だった。その仕掛けを読み解くキーワードは「料金プール制」だ。

 日本道路公団(JH)が1963年に名神道を開通させた当時、郵便貯金などを財源とする財政投融資資金から建設費を調達したが、その債務は路線ごとに償還する考えを採っていた。ただ、1972年に料金プール制が施行され、日本全体の高速道路を1つの財布に見なす仕組みになった。先行して開通した東名道や名神道は債務償還が終わっても一向に無料化されず、稼いだ分は採算の見込めない地方路線の建設に回された。

 さらに、高速道路の整備を望む自治体の要望に応えるため、当時の建設省(現在の国土交通省)はJHに対して毎年2000億~3000億円程度の国費を投入。料金収入だけで建設費を賄えない路線の建設にも道を拓いた。

採算無視の高速道路建設に歯止めを掛けようとした

 それに歯止めを掛けようとしたのが、元首相の小泉純一郎だ。JHに対する補助金は小泉が首相に就任した2001年度限りで廃止。「道路関係4公団民営化推進委員会」の議論を経て、JHや首都高速、阪神高速、本州四国連絡橋の4公団は2005年に解体した。

 その上で、高速道路の資産・負債を管理する独立行政法人「日本高速道路保有・債務返済機構」と、機構から資産を借りて運営する6つの道路会社に分離し、各道路会社が機構に使用料を支払い、機構が国に債務を返済する仕組みを作った。

 同時に整備手法も見直された。1999年の国土開発幹線自動車道建設審議会(国幹審)で決めた「計画路線」9342キロメートルのうち、1975キロメートルが民営化時点未完成だった。このうち、1153キロは料金収入で建設費を賄えるため、高速道路会社に整備を委ねた。