バンクーバー新報 2012年9月20日第38号

1937年、425 Carrall Street にあったブリティッシュ・コロンビア路面電車駅前。ニューススタンドやコーヒーショップがあり、当時は街の重要な場所だった(写真:City of Vancouver アーカイブ。Photo: James Crookall)

 9月15日から11月10日まで、ダウンタウン・イーストサイドにあるセンターAで『TO | FROM BC ELECTRIC RAILWAY: 100 YEARS』(都会の電灯! ブリティッシュ・コロンビア路面電車100年祭!)と題した展覧会が開かれている。

 カナダ在住の現代アーティストの作品を通して、バンクーバー市の初期の重要な建築やさまざまなコミュニティの歴史を伝えるのが目的だ。

 キュレーターの原万希子さんの解説で、日系アーティスト、シンディー・モチヅキさんの作品を見せてもらった。

かつての路面電車中央駅

 ダウンタウンの中心からヘイスティングス通りを東へ歩いていくと、チャイナタウンの入り口ともいえるあたりにアジア系カナダ人の現代アートギャラリー、センターAがある。一本向こうのガスタウンはブティック、カフェ、ネイティブ・アートのみやげ店が並び、華やかなにぎわい。様々な人種と文化が入り混ざる一角だ。

 同様に100年前も、このあたりは街の重要な場所だったという。6階建ての第二次帝国式ルネッサンス建築の路面階に、ブリティッシュ・コロンビア路面電車中央駅がオープンしたのは1912年。

 キュレーターの原万希子さんは「このビルの歴史を知れば知るほど、バンクーバーの文化の多重性と豊かさを痛感します。この展覧会は観客を過去100年の旅に連れ出します。そこではヘイスティングス通りは夜はナイトクラブや劇場、ネオンライトにあふれ、メイン通りでは毎朝10時にチリワック電車で郊外の農家から運ばれる新鮮な野菜が路面店で売られていました」と話す。

現代アーティストたち

 このビルの100年祭を記念する展覧会は、中央駅という特殊な建築に焦点を当て、移民たちがバンクーバーに与えてきた文化と、この街が都市化してゆく過程を描き出すのが主なテーマだという。

 参加するアーティストはレイモンド・ボジョレー、スタン・ダグラス、アリ・カジミ、ヴァネッサ・クァン、エヴァン・リー、シンディー・モチヅキら6名のカナダ在住の現代アーティストたち。それぞれの個人史を語りながら、ダウンタウン・イーストサイドの重層する歴史を新しい視点から紹介している。

シンディー・モチヅキさんがかつてのパウエル街を表現

シンディー・モチヅキさんが戦前ジャパンタウンにあった菓子店を再現。展覧会開催中は手作りの大福やかりんとうなども販売している。パウエル街の歴史に焦点をあてたシンディーモチヅキさんによる『Open Doorsプロジェクト』の詳細はこちら

 広いギャラリーの中に、各アーティストの絵画や立体作品、過去の手紙などが展示される中、日系アーティスト、シンディー・モチヅキさんの作品展示は、ひとつの部屋の中にあった。

 箪笥の引き出しに並んだお菓子、隣接する畳、バックには日系人がかつてのパウエル街を語る声が流れる。落ち着いた空間の中で、シンディーさんに話を聞いた。

-祖先はどこの出身ですか?

 祖母はルル・アイランド(リッチモンド)で生まれた2世で、強制移動後日本に行き1960年代にカナダに戻りました。静岡出身の祖父とウォルナット・グローブでイチゴ畑を持っていました。私は4世で、日本語は話すことはできますが書くのは苦手です。