アメリカ海兵隊のMV-22Bオスプレイが予定通り沖縄に配備され、飛行訓練が開始された。しかし現在も、「アメリカ海兵隊が日本防衛に必要な水陸両用戦能力の欠落を穴埋めしている」という事実に目を向けないオスプレイ配備反対陣営や、そのような防衛に関する問題意識は持たずに、単に“オスプレイ恐怖症”によって不安を強めて反対している人々は、極めて主観的な概念であるオスプレイの安全性、それも“100%完全に近い安全性”、すなわち“ゼロリスク”を盾にとって、反オスプレイ運動やオスプレイ監視活動を継続している。

絶対に事故や故障を起こしてはいけなくなったオスプレイ

 オスプレイがカリフォルニアから岩国に移送される以前から筆者が繰り返し指摘してきたように、そもそもオスプレイの安全性に関しての国際的評価は定まっている以上、オスプレイ配備に対する真の論点は、日本防衛にとってのオスプレイの必要性なのである。

 つまり、日本政府・防衛当局は、なぜオスプレイが必要なのかに関しての説明を日本国民に対して行わなければならなかった(「マスコミにつくられた『オスプレイ恐怖症』」「なぜオスプレイは日本防衛に必要なのか」、ならびに拙著『海兵隊とオスプレイ』並木書房)。

在沖縄海兵隊「VMM-265」隊長機(写真:米海兵隊)

 しかし日本政府・国防当局は、オスプレイ配備を巡る真の論点である「日本防衛にとってのオスプレイ、そしてアメリカ海兵隊の必要性」を正面から論ずることなく、「オスプレイの安全性」というその場しのぎの手段でオスプレイ配備反対派を煙に巻こうとした。

 その結果、今後は第3海兵遠征軍はもちろんのこと、アメリカ海兵隊が運用する全てのMV-22オスプレイは、墜落や重大な事故はもちろん、それほど重大ではない事故や故障すらも絶対に起こしてはいけなくなってしまった。

 万が一、オスプレイが重大な事故を起こした場合には当然のこと、何らかの機械的不調によりオスプレイが不時着をしても、それはオスプレイ配備反対派の勝利を意味し、「日本からの即時オスプレイ撤収」そして「普天間基地即時閉鎖」が声高に叫ばれて収拾がつかなくなってしまうであろう。