マット安川 今回ゲストにフリーアナウンサーの祖・押阪忍さんをお迎えして、現在のメディア論やアナウンサー観のほか、最近の日本人の話し方の盲点などについて伺いました。慣用句の使い方やゆっくりとした話し方など、改めて話すことの重要さを勉強しました。

自分の立場を忘れた今のアナウンサー。お笑い芸人の軽い番組が多すぎる

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:押阪忍/前田せいめい撮影押阪 忍(おしざか・しのぶ)氏
フリーアナウンサー、トークアカデミー塾長、エス・オー・プロモーション会長。1959年に日本教育テレビ(現テレビ朝日)の開局とともに入局し、65年にフリーアナウンサーとなる。2009年に大腸がん手術を受けた後、カムバック。著書に『ことばの宝箱』『ことばしぐさ』などがある。(撮影:前田せいめい、以下同)

押阪 今のアナウンサーはおおむね敬語が使えません。それから、TPOを理解していないところがあります。

 アナウンサーというのは本来、脇にいて、センターに出る女優さんや歌手を立てるというような存在であるべきなんですが、自分もスター的に同列のように感じている方が、特に女性アナウンサーに多い。

 このあいだバラエティー番組を見ていたら、漫才師の方々の話が下ネタふうになったんです。それで進行の漫才師が、一緒に出ている女子アナに、君は大きい、小さいはどっちがいいのと聞いたら、「私、デカいのがいい」とサラリと言ったんです。

 私はそれを聞いてドキっとしました。これはちょっと違うんじゃないかなと。ノリすぎて、アナウンサーという立場を忘れてしまっている。

 お笑いの方々が司会をするというのは時代のせいなんでしょうが、私の年代ではちょっと多すぎる気がします。特にゴールデンに、ザワザワした番組が多すぎる。

 あまりにも若年化したものが多く、もうちょっと知性というか教養というか、何か心にストンと落ちる感動というか、触発されるような番組がほしいなと思っています。

日常生活から会話が減り、生きた言葉が使われなくなってきている

 今は、言葉に対する考え方が少し乏しいというか、薄くなってきたんじゃないかなという心配があります。生活の中から言葉が減ってきている。