バラク・オバマ大統領の世界観とはなにか。
同大統領の再選の見通しは別にして、同盟国の日本にとっても大いに気にかかる問いである。オバマ大統領は就任以来、3年8カ月、その対外政策は具体的な軌跡を数多く印してきたものの、なお本当に実現を目指す世界とは? あるいはその中での米国の役割は? となると、まだまだ疑問が多々残る。
そんな中で米国ではオバマ氏の世界観を彼の出自や教育と結びつけて、「米国の力を弱め、全世界の植民地主義がもたらした負の結果を逆転させることにある」と分析するドキュメンタリー映画が登場した。しかも全米各地で、ドキュメンタリー映画としてはまったく異例の大人気を博しているのだ。
米国大統領選はいよいよ本番に突入した。公式には民主党全国大会の最終日の9月6日、オバマ大統領が候補指名を受諾する演説をして、共和党のミット・ロムニー候補と正面から対峙したわけだ。そんな緊迫の時期に、オバマ氏の政治や思想の背景に批判的な光を当てたこのドキュメンタリー映画が全米で関心の的となったのである。
その原因は米国民の多くがなおオバマ氏の出自や理念が一体、なんなのか、模索を続けていることだろう。特にオバマ氏を支持しない層には、オバマ氏が目指す究極の政治目標への警戒や不信が強く、そうした心情がこの映画への強い興味を生んでいると言えそうでもある。
オバマ氏の反植民地主義のルーツを探る
この映画は「2016年=オバマのアメリカ」と題された約90分の政治ドキュメンタリー作品である。その人気の輪の急速な広がりはまさに驚異だと言える。そもそも日本でと同じように、米国の映画市場ではドキュメンタリー作品が一般映画館で上映されることはまずない。まして全米規模での上映というのはほとんど例がない。ところがこの映画はその枠をあっというまに打ち破ってしまったのだ。