番組開始から1周年を迎えた今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。ゲストに新極真会南大阪支部・内藤道場の内藤隆富氏を迎え、現代における武道の意義や空手の五輪正式種目化に向けた取り組み、武道家から見た今の政治などについて聞いた。
武道は肉体を鍛え、他人への思いやりの精神を育む
中山 今回は、新極真会南大阪支部・内藤道場の内藤隆富師範代にお話を伺います。
今、暴力によって人の命が奪われるニュースが相次いでいます。先日も東京の目黒区で、母親が5歳の息子を「言うことを聞かない」という理由で手足を縛ってごみ袋をかぶせ、殺人未遂の疑いで逮捕される事件がありました。こうした現状において、武道である空手が果たせる役目は何だとお考えですか。
内藤 空手は、3歳くらいの小さな子どもから60~70代まで幅広い年齢の方が学ぶことができます。特に新極真会の場合は直接技を当てるので、当てられた痛みも分かるし、自分がどれくらいの力で攻撃したら相手がどの程度ダメージを負うのかも分かります。つまり直接触れ合うことで、相手の痛みを察する能力も養われるのです。
事件を起こした母親も、もし人との触れ合いの中で痛みを感じた経験があるのなら、こんな突拍子もなく酷いことをしないと思うんです。
昔の子供は相撲やおしくらまんじゅう、男の子なら取っ組み合いの喧嘩をしました。今は集団で遊ぶ機会が減り、ゲームばかりする環境が増えてしまった。ですから相手と直接触れ合ったり、礼儀礼節を学ぶ意味でも武道が果たす役割は大きいと思いますね。
空手は、自分が繰り出す技を相手が受け、相手の技を自分が受けるという競い合いです。始まる前には必ず「押忍、お願いします」と言い、終わったら両手で握手をし、「押忍、ありがとうございました」と言って相手を尊敬する気持ちを育みます。
その意味で抑止力にもなるし、自分が肉体的に強くなることで他人への思いやりの精神も持てるようになる。今、新極真会ではそうした「強く優しい空手家」を育成しようと考えています。
今も鮮明に記憶に残っている、故・大山倍達氏の言葉
中山 ロンドン五輪の日本柔道は、男子が五輪史上初の金メダルゼロという結果に終わりました。空手と柔道は違う競技ですが、武道という広い括りで注目されている点についてはどうお考えですか。
内藤 柔道も空手も日本で発祥した武道ですから、歴史を遡れば柔道にも当て身があり、空手にも投げ技がありました。そこから枝分かれして投げ技や抑え込みに特化したのが柔道、突き蹴りに特化したのが空手です。