前回の小覧では、ロシア国外に置かれている軍事基地が使用料の値上げ要求に直面している現状をご紹介した。こうしたカネの問題に加えて、さらに頭の痛い問題もある。

ロシアを慌てさせたオレンジ革命

あの「タフガイ」が暴走?プーチン首相、ハーレーを走らせる

ウクライナのセヴァストーポリで開催されたバイク愛好家イベントにハーレーに乗って登場したプーチン大統領〔AFPBB News

 例えばウクライナだ。

 同国のクリミア半島にあるセヴァストーポリ基地は帝政時代からの軍港で、現在もロシア海軍黒海艦隊の主力が駐留しているほか、近郊のサキ市には空母への離発着をシミュレートするための訓練施設NITKAが設置されているなど、黒海方面を睨む重要なロシアの戦略拠点である。

 また、弾道ミサイル警戒用レーダーなどの重要施設に加え、弾道ミサイルや航空産業の分野でもウクライナはロシアにとって欠かせないパートナーだ。

 しかし、ウクライナは1990年代以降、親ロシア路線と親西欧路線との間で幾度も揺れ動いており、特に2004年の「オレンジ革命」によって成立したユシチェンコ政権は、北大西洋条約機構(NATO)への加盟や2017年までにロシア黒海艦隊を撤退させることなどを掲げてロシア政府を大いに慌てさせた。

 ロシアとの協調路線を重視するヤヌコヴィッチ政権が2010年に成立したことで、セヴァストーポリの租借期限は2042年まで延長されたが、今後のウクライナの政治状況いかんによってはどう転ぶか、予断を許さない。

ロシアから距離を置きたがるウズベキスタン

 すでにロシアは弾道ミサイル早期警戒レーダー基地を閉鎖して自国領内に代替レーダーを設置したほか、やはり自国領内のノヴォロシースクに新海軍基地を建設中であるが、より根本的な問題は、ロシアがウクライナとの間でその程度の不安定なパートナーシップしか築けていないという点であろう。

 これはカネで解決のつかない、いわばロシアという国家の信頼性の問題であるだけに、問題はより根深いと言える。

 キルギスからの米軍基地撤退に関連して見逃せないのが、ウズベキスタンである。同国は中央アジアの地域大国として何かとロシアとの距離を置こうとする傾向が強い。

 軍事的に見ても、ロシア軍基地を設置させていないことはもちろん、ロシアとの合同演習もほとんど行っておらず、今年6月には集団安全保障条約機構(CSTO)への参加を突如「停止」した(集団安全保障条約には「脱退」の規定はあっても「停止」という規定はないのだが)。