マット安川 今回のゲストは外交のスペシャリスト・田久保忠衛さん。懸念される周辺有事の可能性や日本の安全保障問題はもちろん、携わっている新憲法草案の中身についても詳しくお聞きしました。
憲法を改正して悪者に毅然と対する姿勢を示せ
外交評論家・杏林大学名誉教授。国家基本問題研究所の副理事長として取材・啓蒙活動にあたっている。(撮影:前田せいめい、以下同)
田久保 表彰台で君が代を歌わないオリンピック選手を見るにつけ、戦後の日本にしっかりした国家観が根付いていないことを痛感します。国旗、国家というものを明確に認識していない人間が少なくない。こんな国はほかにありません。これはやはり、アメリカから押しつけられた憲法を後生大事に戴いているからです。
尖閣諸島といい北方領土といい、領土をめぐって挑発的な隣国に日本は毅然と対処しないといけませんが、口だけじゃダメです。血を流す気持ちと、その裏付けとしてきちんとした軍隊が必要だ。
ところが今の自衛隊は国内的には軍隊ではなく、国際的には軍隊だというおかしな状態にあります。政府がそういう二枚舌を使わないといけないのは、陸海空その他の兵力を禁止し、国の交戦権を認めない日本国憲法のせいにほかなりません。
私は産経新聞の「『国民の憲法』起草委員会」の委員を務めています。他の委員たちと新しい憲法をどうしようかとやっているところですが、そこで槍玉に挙がるのが日本国憲法の前文です。
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とありますが、これはいったいなんなのか。「平和を愛する諸国民」のところに、近隣諸国の名前を入れてみろと言いたいですね。
ロシアは北方4島を持っていき、北朝鮮はわれわれの人間までかっぱらい、韓国は慰安婦問題などの歴史認識でいまだにわんわんやっている。中国がどういう存在かはみなさん分かっているでしょう。世界2位の軍事大国で、経済的にも日本を追い抜いた。その大国が尖閣を脅かしているわけですよ。