しかし世界第1位の農産物輸出国はアメリカだが、第2位はオランダである。面積は日本の1割強なのに、農産物の輸出額は世界の1割近い。農家1人あたりの年間輸出額は14万6000ドル(約1100万円)と、世界トップだ。その主力はよく知られている花や観葉植物だが、トマト、ズッキーニ、パプリカなどの野菜も多く、その輸出額は毎年伸びている。
浅川芳裕氏(『農業経営者』副編集長)によれば、日本も農業GDP(国内総生産)で見ると世界第5位である。先進国ではアメリカに次ぎ、ロシアやオーストラリアの3倍以上で、特に野菜や畜産物の生産性が高い。狭い土地で古くから集約農業を続けてきた日本は世界有数の農業先進国なのだが、穀物を偏重する農政が自由な農業を阻害している。
農業は衰退産業というイメージがあるが、「食」は成長産業である。新興国の旺盛な食欲で世界の農産物市場は2013年には2兆ドルを超える見通しで、これは家電の世界市場(6800億ドル)のほぼ3倍である。
グローバル化の中で日本が生き残っていくために重要なのは、どういう産業に比較優位があるかだ。これは絶対優位である必要はない。農業生産の絶対的コストを比較すれば日本が新興国に勝てないことは明白だが、日本が高級農産物をつくるのが得意であれば、それに特化すればオランダのように農産物輸出国になることも可能だ。
日本の食文化には大きな比較優位がある。海外に在住している日本人から「食い物だけは日本がいい」といった切実な話を聞くことがよくある。いったん日本の食文化に慣れると、特に英米の粗雑な食事には耐えられないという。
質の高い農産物を使えば、世界的に評価の高い日本食を世界に輸出できるが、現状では難しい。その原因は、輸入規制だ。