民主党内で、9月の代表選挙をにらんでTPP(環太平洋パートナーシップ)が政局の焦点になってきた。参議院では3人の議員がTPP反対を理由にして離党届を出し、鳩山由紀夫元首相らがTPPに反対する分派活動の動きを見せている。
これに対して野田佳彦首相は、TPPが分裂の火種になることを恐れて慎重な姿勢を見せていると伝えられるが、これは逆である。TPPは、政策を軸にした政界再編の格好のテーマなのだ。
もたつくTPP参加
首相は就任以来、TPPを消費税の増税と並ぶ政権の重要課題と位置づけ、2011年11月には「交渉参加に向けて関係国と協議に入る」との方針を打ち出した。当時、これは日本による実質的なTPP参加表明と国際社会からは受け止められ、メキシコとカナダもTPP交渉参加に向けて関係諸国との協議に入ることを希望した。
日本も今年中に参加表明するものと見られていたが、その後、消費税をめぐる党内調整が難航し、TPPはほとんど前進していない。
反対派には山田正彦元農相や川内博史衆院議員など消費税率引き上げ関連法案に反対しながら党にとどまった議員も多く、TPP参加を表明すると20人以上が離党すると予想する向きもある。
このため代表選挙まではTPP問題を封印した方がいい、というのが首相周辺の考えらしいが、これは交渉スケジュールから考えると無理がある。
6月にはメキシコとカナダが日本より先に正式参加を表明し、参加9カ国の了解を得たため、年内には参加する。これと同時に日本が参加するためには、9月には参加表明しないと間に合わない。参加が遅れれば遅れるほど、交渉内容が固まってしまうので、日本にとって不利な協定になる。
「食」は日本の成長産業
反対派は「TPPで農産物の輸入が増えて日本の農業は壊滅する」と言う。土地の狭い日本の農業は高コストで、海外の安い農産物が入ってきたらひとたまりもない、というのが農林水産省の主張だ。