200人を超える死傷者を出した中国の高速鉄道の衝突事故から1年が経った。

 世界一のスピードをひたすら追求した結果、発生したこの大事故は、「猛スピードで発展する中国経済」に警鐘を鳴らすものでもあった。

 中国は時速300キロの高速鉄道技術を外国から買い入れたが、それを自前で時速350~380キロに改造した。そして、十分な運行試験をしないまま量産化した。その結果、約40人の命が失われたのである。事故直後、政府はメディアから激しい非難を浴び、鉄道の「速度追求」は一時棚上げとなった。

 今年の春節、北京と上海を結ぶ高速鉄道は空席が目立った。1年の中で需要がピークに達する時期にもかかわらず、だ。乗客を取り戻すためだろうか、北京~上海線はここに来て料金の一部値下げを断行した。空路との競争もあるだろうが、市民の信用回復には至っていないことが窺える。

 ただし、事故から1年が過ぎた今、中国の鉄道事業には揺り戻しが見られる。事故直後には鉄道建設予算が7000億元から4000億元に圧縮されたが、再び10%近い増額が図られた。2012年の鉄道建設は、ペースダウンしたとはいえ、それでも6366キロが新たに敷設されるなど拡張が続いている。

 減速する景気を刺激する狙いもあるのか、メディアも事故を振り返るよりも、高速鉄道がもたらす経済効果を強調する論調が主流である。

中国に「鉄ちゃん」はいるのか

 さて、少し前まで、中国人観光客にとって日本の新幹線に乗ることは、日本への旅行で外すことのできない観光コースだった。だが最近は、「新幹線は中国にもある」ということで、興味の対象ではなくなりつつある。

 しかし、「中国にはないが日本にはある」というものは、まだまだ存在する。その1つが日本独特の「鉄道文化」だ。

 日本において、鉄道ファンは俗に「鉄ちゃん」と称される。中国にも鉄ちゃんは存在するのだろうか。

 1987年に中国に留学し、その後、中国駐在を経て中国事業に取り組む自称“乗り鉄”(列車に乗ることを趣味とする鉄道ファン)のI氏はこう語る。