6月29日、日本と韓国間で安全保障の機密情報を共有するための「秘密情報保護協定(GSOMIA)」の署名が韓国側からの申し出によって署名の1時間半前に突如延期になった。これは外交上異例のことであり韓国側の事情が原因とされている。

突然延期となった韓国の国内事情

日本大使館の正門に軽トラック突っ込む、ソウル

韓国が実効支配している日本領土の竹島〔AFPBB News

 日本はすでに同種の協定を米国、フランス、北大西洋条約機構(NATO)と締結している。内容は軍事技術や戦略・戦術データなどであると言われている。

 韓国との協定の狙いは北朝鮮の核開発とミサイル情報、特に発射された場合の情報提供など日本の安全に直結する秘密情報を共有するという点にある。

 本年4月のミサイル発射に際してもリイアルタイムな情報を有する韓国との連携が取れず日本の警戒情報発令が遅れて問題となった。即応態勢・対処確立のため、日本としては是非締結したい協定である。

 日韓の「秘密情報保護協定」の目的は両国の軍事機密が第三国に漏洩しないようにするための取り決めであり提供された情報の目的外使用を禁じている。また提供された情報は共通するルール(秘密の定義など)で管理することとなっている。

 この協定は一般的には「General Security of Miritary Information Agreement」であり、軍事情報を意味するが韓国の反日世論に配慮して「Miritary(軍事)」の言葉をわざわざ外した経緯がある。

 韓国側の締結延期の原因は以下のように指摘されている。

(1)国内政治上

 今年12月に韓国大統領選挙が実施されるが、保革が伯仲する中で反日勢力を刺激する政策には手をつけたくない。また韓国には植民地支配の歴史を清算すべきとの野党勢力には日本との安全保障協力に対して拒否反応が強い。

 特に「従軍慰安婦」問題は日本が法的に解決しているとすることが韓国国民の反日感情となっている。また「竹島」問題も日韓のトゲとなっている。

(2)締結手続き上

 協定は4月に仮署名され、5月に文書の誤りを訂正、6月上旬には協定文が確定されたが、国会やメデイアに公開されていなかった。

 協定締結は国会承認事項ではないが、同じ協定でも米国との自由貿易協定(FTA)締結では逐次進捗状況を公開しており、日本との協定協議には情報公開がなく秘密裏に交渉したのではという野党や国民の反発がある。

(3)日本側の問題

 協定を推進しながらも北鮮のミサイル発射時には、イージス艦を黄海に配備し、独自の情報収集を行った。また原子力基本法を改正し「核武装」への論議を起こしたことなど専守防衛という安全保障の基本を変更するのではないかとの疑念を韓国に持たせた。

 以上の原因は直接的には正しい認識と考えるが、その底辺に隠れている基本的な要因を見落としている感がする。