上海万博は開幕したばかりだが、中国市場の動きを見ると、すでに「ポスト万博」という新しいステージに入っているように見える。

 株式市場は実体経済のメルクマールと言われる。上海株式市場は5月20日現在で1カ月前と比較すると株価総合指数が3150ポイントから2500ポイント近くまで調整されている。株価が大きく調整されているのは、この先のマクロ経済の動向を投資家が悲観的に見ているからである。

 しかし、今年の中国のマクロ経済について、国際機関を中心に軒並み楽観的な予測が発表されている。中国経済を最も慎重に見ている国際通貨基金(IMF)でさえ、2010年の中国経済の成長率は10%に達すると見ているようだ。それを裏付ける経済指標として第1四半期の経済成長率は11.9%に達した。

インフレ再燃と不動産バブルの暗雲

 だが、それにもかかわらず中国市場では悲観論の「雲」が漂っている。中国経済の景況判断について「すでにバブル化している」という見方が中国政府部内で半数以上を占めている。

 まず、インフレ再燃を警戒する動きが強まっている。今年に入ってから消費者物価指数は2%を超えて4月には2.8%の上昇に達した。何よりも食品価格指数は6.8%に高騰し、家計を直撃している。

 また、不動産価格の上昇が止まらない。現在の中国社会では、国民の最大の関心事は上海万博ではなく、不動産市況の動向である。このまま不動産価格が上昇を続けていけば、不動産市場は庶民に住居を供給するのではなく、一握りの富裕層が投資・投機するマネーゲームの場になる。否、実際、すでにそうなっている。

 そもそも経済学では「バブル」について明確な定義がなされていないが、次の2点をもって現在の中国の不動産市場がバブル化していると判断できる。

 一般的に、1戸あたりの不動産価格が勤労者世帯の年収の6倍ぐらいなら妥当な水準と言われている。それに対して、中国の不動産価格は勤労者世帯の年収の18倍にまで高騰していると言われ、明らかに高すぎる。

 さらに問題なのは、すでに販売されている不動産(マンションなど)の空室率が軒並み30~40%に達していることである。

 マンションの空室率が高いというのは、購入した者が自ら住むためのものではなく、キャピタルゲインを狙う投資・投機の対象だからである。筆者が4月に上海出張した際、不動産投資を行う富豪がワンフロアーずつ購入していたのを目にしたことがある。