森本敏防衛相は、着任早々、大きな困難に直面している。2012年7月下旬に山口県岩国基地への持ち込みと10月以降の本格運用が予定されている米海兵隊の新型輸送機「MV22オスプレイ」の日本配備について、関係自治体首長がこぞって猛反対しているからだ。
沖縄の仲井真弘多知事は、7月1日、説明に訪れた森本防衛相に対し「安全性に疑問があるものは拒否するしかない」「配備を強行し、事故が起きた場合は、県内の米軍全基地を即時閉鎖という動きにいかざるを得なくなる」と述べた。
同日、やはり森本大臣の訪問を受けた岩国市の福田良彦市長も「安全性の不安が払拭されておらず、(オスプレイ運用は)了解できない。陸揚げ自体を行うべきではない」と岩国基地への持ち込み中止を求めた。二井関成県知事や隣接する広島県の湯崎英彦知事もオスプレイ配備に反対している。
4月と6月に墜落事故、原因はまだ調査中
V22オスプレイ(海兵隊型MV22、空軍型CV22と呼称)は回転翼をエンジンごと水平方向と垂直方向の両方に指向させることができ、垂直離着陸・空中停止と水平飛行の両方が可能なティルトローター機である。回転翼機(ヘリコプター)と固定翼機の双方の性能を併せ持つ新しいジャンルの機体で、2005年から運用が開始された。
しかし、1980年代の試作期より重大事故を繰り返していて「ウィドウメーカー」(未亡人製造機)というありがたくない異名で呼ばれたこともあった。
この度の日本配備にあたって、関係自治体首長を先頭に反発の声が沸き起こったのは、この4月以降も2件の墜落事故が相次いで、以前より燻(くすぶ)っていたオスプレイの安全性に対する疑念が基地所在地住民を中心に大きく燃え上がったからだ。
モロッコのMV22墜落事故(4月11日発生、死亡2名、重傷2名)、米フロリダ演習場でのCV22墜落事故(6月13日発生、負傷5名)という2つの事故は、いずれも原因をいまだ調査中だ。米側も事故調査報告がまとめられる予定の8月末頃まで日本でのMV22の飛行は差し控えるとしている。