ギリシャ財政危機に端を発したユーロ不安だが、問題の本質は大陸欧州の盟主として揺れ動くドイツ自身とそれを取り巻く世論、政治にある。ドイツが大陸欧州の覇権を目指し続けることが国内外で容認されていれば、これほど深刻な市場不安をもたらす事態にはならなかったように思う。
ギリシャ問題を簡単に整理してみよう。
まずは強いユーロを背景に、経済的な実力に不釣り合いな多額の海外向け国債発行で成長していたギリシャ経済が破綻した。他国との統一通貨であるため、通貨の減価による対外的な債務の調整ができず、ギリシャは急激な財政緊縮を迫られた。
この時点で欧州各国が実質的にギリシャを切り捨て、一時的に大変厳しい不況を強いることができれば問題は解決できたかもしれない。同国の経済規模は小さく、しかも負債の中心は国債、資産の中心は公的部門という単純な経済だからだ。
その処方箋としては明らかに、公的部門を削減した上で一時的に国民に窮乏を我慢させるしかない。もちろん国際経済への実態面での波及効果は極めて限定的で済んだはずだ。
「護送船団」による統一効果を重視した欧州各国
しかし、その圧力にギリシャの国内政治が耐え切れなかった。さらに、弱小とはいえユーロ加盟国を切り捨てる決断に欧州の主要国も踏み切れない。「護送船団」方式による統一効果を重視したわけだ。
欧州各国の利害も錯綜していた。ポルトガルのような弱小国は、次に自分たちが切り捨てられないためには、ギリシャを救うことが大事だと判断した。フランスは、欧州経済圏の確立により最も恩恵を受けているドイツに資金を出させ、自分たちはそれに乗っかることが国益に適うと考えていた。
国際金融関係者によれば、欧州主要各国は2010年4月下旬のG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)やその準備会合などで、「如何にしてドイツに資金を拠出させるか」という観点から議論を続けた模様だ。
席上、非ユーロ国が「ギリシャを追い詰めた場合の問題点は何か」と敢えて問うたが、皆静まり返って誰も答えようとしなかった、という話も漏れ伝わる。結果的として、ドイツを中心に各国から資金が拠出され、ギリシャを支える基金が設立された。